「暴動が起きる前のエジプトは、まるで今の中国のようだった。中国で暴動がいつ起こっても不思議ではない」――。日本の私立大学で教鞭を執る上海出身のF教授は語る。
エジプトの暴動は、物価上昇や失業、特権階級の腐敗問題に対する民衆の怒りが発端となった。今の中国は同じ問題を抱えており、相似形を成す。
2月11日、ムバラク政権は辞任に追い込まれた。果たしてアラブの民主化の動きは中国に飛び火するのだろうか。
高まりつつある政府や体制への不満
「中国は一党独裁」であり、「独裁国家が経済活動や市民生活を虐げている」という見方は、今の中国を100%正しく語っているわけではない。
中国は「市場化」と「私有化」(2007年に物権法が成立し、私的所有権が承認された)を掲げて経済改革を進め、世界第2位の経済大国にのし上がった。とりわけ上海では、外資の進出によって市場が活発化し、市民の生活水準が大幅に向上した。
だが、中国では自由や民主主義、立憲政治が保障されているわけではない。
見た目は先進国並みに発展した中国沿海部の都市ですら、自由に集会を開けない。言論、出版、信仰に至っては言わずもがな。結社や移動、ストライキ、デモの自由はない。「法律はあっても法治はなく、憲法はあっても憲政はない」という現状は否定できない。
中国ではここに来て構造的な不平等が浮き彫りになり、経営者と労働者、官僚と民衆の対立が際立つようになった。2010年に頻発したストライキも、完全に鎮火されたわけではない(昨年の一連のストライキは、経営者をスケープゴートにして、政府や体制への不満を回避させるものだったという見方もある)。