プレゼントによって支えられる人生とは何か?
タイガーマスク現象について考えるにつけ、私の頭にはその問いが浮かぶ。
多くの論者は、全国各地の児童養護施設にランドセルをはじめとする物品が届けられたことについて、「善意の連鎖」に感銘を受けたと述べたうえで、一過性のブームに終わってほしくないと期待を込める。
<タイガーマスク運動は、「奪われてきた」当たり前の優しさや思いやりを取り戻そうとしている「人間性の回復」の動きのようにも見えるのだ。これがブームで終わっても、また別の形で「善意の連鎖」が続くことを願いたい。>
(毎日新聞、1月26日夕刊、雨宮処凛「異論反論」)
誠にもっともな感想だし、実際に政府が児童養護施設の職員の増員を決めたことで、タイガーマスク運動は大きな成果を挙げた。また、児童養護施設への支援策を考える政府の検討会も発足された。
そうした成果を認めながらも、やはり私が気になるのは、善意の発露によって「人間性の回復」を果たした側ではなく、善意を受けとめる立場に置かれた者たちの意識の方である。
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前回のコラムを執筆して以降のトピックとしては、児童養護施設の「居室定員の見直し」が挙げられる。
<厚生労働省は関連法を改正し1948年以来「1部屋15人まで可」としてきた居室定員を見直すことに決めた。上限を4~6人とする方向で検討している。施設で暮らす子供の里親への委託を促進するため、委託に関するガイドラインも初めて設定する。1月28日の専門家会合で案を示し、4月にも実施する。>
(毎日新聞、2011年1月26日朝刊)
検討会の長を務める厚生労働省副大臣・小宮山洋子議員も認めるように、タイガーマスク現象の後押しによって、10年来の懸案が次々に進展を見せており、児童養護施設を巡る環境は大きく改善されようとしている。