1月下旬、都内某所のある新築マンションのモデルルームを訪れた。営業担当者に「賃貸か、購入か、結局どちらがいいんでしょう」と尋ねたら、よくある質問なのだろう、担当者の男性は「それは永遠のテーマですね!」と間髪入れずに回答した。

 JR某駅からバスに乗ったところにあるその物件は、約70平方メートルでおよそ4000万円。頭金と諸費用(税金等)の約400万円を用意し、35年の銀行ローンで3800万円を借り入れるとすると、月々の返済額は13万8000円(管理費等込み)となる。

 筆者は現在、都内の賃貸住宅(約70平方メートル)に住んでいる。マンションを購入した場合、毎月の返済額は、今の家賃とあまり変わらない。だが、最寄り駅から徒歩3分、東京駅まで18分という利便性はやはり捨てられない。結局、マンションの購入は見送ることにした。

 賃貸マンションも分譲マンションも、多少の付加価値の差はあれど、決定的な質の差はない。もはや日本では「分譲マンションでなければ」という絶対性はない。

「何が何でも持ち家」のワケ

 ところが中国では事情が異なる。「何が何でも持ち家」なのだ。

 筆者は、上海でタクシーに乗るたびに運転手からこんな突っ込みを受ける。「いつから上海にいるの? ふーん、90年代後半からいるんだ。マンションはどこに買ったの、え、買ってない? なんであの安かった時代に買わなかったの。買っていたら今頃は大金持ちになってただろうに!」

 1990年代後半は、まだ平米単価が4000元(当時1元=約14円)程度であり、70平方メートルの物件が400万円程度で買えた。あの「格安」の時代に、買える余力のある者が買わないというのは理解できないという。

 それにしても、なぜ上海市民はそこまで不動産にこだわるのだろうか。

 確かに日本でも不動産バブルの90年前後には、将来の値上がりを見込んで購入を検討する人たちが、こぞってモデルルーム見学に訪れた。だが、「猫も杓子も分譲マンション」というわけでもなかった。銀行貸出増加額の中で個人向け住宅ローンは2割ぐらいで、むしろマネーは商業用不動産に向かった。

 ちなみに、94年から国土交通省(当時は運輸省・建設省)が行っている「国民の資産としての土地に関する意識」調査によると、「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産であるか」という質問に対して、2000年以降は「そう思わない」が「そう思う」を上回っている。資産としての不動産「所有」の魅力はだんだんと薄れていることが分かる。

 中国でも、「不動産」を資産として所有しようとする人はいる。だが、不動産所有にこだわる理由はもっと多様である