若い頃や貧しい頃は、金持ちになりたいとか、豊かな生活に憧れるものだよね。実際、おれもそうだった。男なら、いい車や高い時計が欲しくてしょうがないっていう時期が、誰だってあるもんだ。

 だけど、念願かなって欲しかったものをようやく手に入れると、案外どうってことがないもんで・・・。

 これは、手に入れてみて初めて分かる感覚だ。手に入らなければずっと「欲しい」って思い続けて欲にとらわれたままなんだな、これが。

幸せや富はほどほどが一番だ

 人間はどんなに恵まれた環境にあっても、不満や怒り、悩みや失望というのはなくなるもんじゃない。むしろ、恵まれた環境の人ほど悩みや不安は逆に多くなることもあるんだな。

 みんなが憧れて、まるでシンデレラみたいだったイギリスのダイアナ妃は、生前に数回の自殺未遂をしたらしい。また、アメリカでは社会的な成功者の半分が心療内科に通った経験があるっていうしね。名誉と物質的に満ち足りた生活が、必ずしも幸せだとは言えないんだよ。

 古今東西、若い女性は玉の輿に乗ってぜいたくな生活をすることに憧れるものだ。だけど、権力者や大富豪の妻ほど不幸せなものはないよ。だって、女も若くて綺麗なうちは「蝶よ花よ」で可愛がられて楽しいだろうが、歳をとったら亭主は激変してしまう。

 特に権力やカネを握っている男は、大抵、別の若い女に走るものだ。金持ちが集まるゴルフ場やマリーナに行ってごらんよ。一目瞭然だから。

 男の願望が行き着くところは、毎日、女を替えて遊ぶこと。もし、それをしていなければ、ただ我慢しているだけの話だ。男の異性獲得欲ってのは長年連れ添った夫婦の絆を脅かすほど、強力なものなんだな。

 不相応な富や名誉ってのは、エデンの園の樹の実みたいなもんで、その甘美を知ればもっともっとそれが欲しくなる。幸せや富ってものは、ほどほどの身の丈が一番だ。人間は空腹を抱えながらも、夢を抱いている発展途上の時の方が、案外、幸せなのかもしれない。

仕事は選ぶ、会社は大きくしない

 最近、断捨離ってことばをよく聞くけど、これはいらないものを捨てるって意味らしい。

 昔はモノがない時代だったから、人々はモノに憧れた。所有することが豊かさだと思って、モノを手に入れるために一生懸命働いたんだな。

 でも、最近は、モノってのはありすぎると心が騒がしくなるってことにみんな気づきだしたんだね。実際、不要なモノを捨てるってのは、執着から解放され、心が軽くなるもんだよ。

 会社だって不要なものは持たない方がいい。「会社を大きくするな」ってのは、うちの死んだオヤジの遺言なんだ。