恐らくトランプ大統領は、ハリス氏を最も信頼できる右腕として、韓国、北朝鮮、中国北部戦区の目付役とし、情勢判断を委ねたのだろう。彼が危ないと判断したら、トランプ大統領はすぐさま北朝鮮壊滅の準備にかかるだろう。

 一般的に自衛隊・米軍とも人事異動は2~3年なので、1年あるいは1年半で主要な幹部の半分は変わる。そのため米韓演習の中止期間は1年が限界であろう。特に今は太平洋正面の米軍の主要指揮官が交代しているので、動く時ではない。

 トランプ大統領も、「対話が中断すればすぐに演習を開始できる」と警告している。ポンペオ国務長官は、2年半以内に完全な非核化ができると言っているが、それでは次の大統領選挙には間に合わないし、軍事行動の再起動には問題がある。

 トランプ大統領がABCテレビのインタビューに答えて、「1年後に私は間違っていたかもしれないと言うかもしれない」と発言した意味は、軍事行動を起こすかどうかの見極めは、1年以内だということであろう。

 もう1つのカギは、近々ポンペオ国務長官と死神と恐れられるジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が北朝鮮に入り、米朝間の非核化に向けた詳細な協議を行うことだ。

 「死神」を受け入れる北朝鮮には並々ならぬ決意があるのだろう。

 ポンペオ国務長官は中国の動きも念頭に「北朝鮮の完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を要求すると述べ、北朝鮮との協議の場では核計画の全容を数週間以内に申告するよう求め、検証のため米国以外の関係国からも専門家を呼ぶとしている。

 そして非核化の中に核だけではなく、生物・化学兵器やミサイルなどを含めたと説明している。

 もし北朝鮮が公約通り、非核化に向けて目に見える形で具体的行動をとらなければ、1年以内、早ければ今年の暮れには北朝鮮に対する見切りをつけるだろう。そういう意味で、米国の軍事的選択肢はなくなってはいない。

 このように経緯をたどると、米国は北朝鮮問題は解決済みとし、すでに対中国へとシフトしたと見るしかない。なぜなのか。よほどの確信がなければそんな行動に出ることは無謀であり、ここまでの説明でもまだ不十分だろう。