日本でも、5G(第5世代移動通信)が話題になり始めた。4Gに比べて「通信容量は10倍」とか「通信速度は2倍」などとキャリアが宣伝する割には、ユーザーは冷ややかだ。使える周波数が無線LAN(Wi-Fi)より高く、携帯電話などの公衆無線に使えないからだ。
他方、アメリカではTモバイルとスプリントが「合併したら5Gネットワーク構築に400億ドル投資する」と発表した。これはTモバイルが電波オークションで得たUHF帯(600MHz帯)を使うものだ。この帯域は日本でも空いているが、使えない。テレビ局が占拠しているからだ。
今の5Gは携帯電話に使えない
5Gといっても、技術的にはいま携帯電話で使われている4Gと飛躍的に違うわけではない。変調技術はOFDM(直交周波数分割多重)という地上デジタル放送と同じ方式で、1つの周波数を同時に多くのアンテナで使える「Massive MIMO」という技術を使って通信容量を大幅に増やせることが特長だ。
しかし日本で5Gに割り当てられる予定の周波数は、3.6GHz(ギガヘルツ)以上で使いにくい。電波は周波数が高くなるほど情報量は多くなるが、直進性が強く、減衰が大きくなる。たとえばWi-Fiの帯域は2.4GHzだが、100メートルも離れるとつながらなくなる。
3.6GHzというのは、Wi-Fiよりつながりにくいので、これで公衆無線ネットワークをつくるには、基地局を数十メートルの距離に置いて、都市を埋め尽くさなければならない。基地局は今はビルの屋上にあるが、それを各家庭ごとに置かないとつながらない。
それは理論的には不可能ではない。1999年にソフトバンクとマイクロソフトと東京電力の合弁会社「スピードネット」は、2.4GHzの基地局で公衆無線を実現しようとしたが、挫折した。その後もWi-Fiによる公衆無線は、すべて失敗した。