映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』予告編より(出所:YouTube

 2017年に英国で製作されて大ヒットした『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』という映画が日本でも上映中だ。ご覧になった方も多いのではないだろうか。

 第90回アカデミー賞では、主人公のチャーチルを演じた主演男優の特殊メイクを担当した辻一弘氏が日本人として初めて「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞し、日本のメディアで話題になった。だが、主演のゲーリー・オールドマン氏も主演男優賞を受賞していることや、作品内容そのものについてはあまり話題にはなっていないようだ。

 オリジナルの英語版のタイトルは "DARKEST HOUR" とそっけない。直訳すれば『最悪のとき』とでもなろうか。一方、日本語版のタイトルは『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』とじつに長ったらしく説明的である。第2次世界大戦が終結してからすでに73年、もはや歴史上の人物になっているとはいえ、戦後日本の運命を決めた「ヤルタ会談」や「ポツダム宣言」のからみで日本史の教科書には必ず登場する「お馴染みの人物」のはずなのだが・・・。

 今回は、チャーチルが首相に就任してから究極の決断を下して実行に至った数日間を描いたこの映画を、現代史の文脈のなかに位置づけ、現在の日本人が視聴すべき意味を考えてみたい。

 映画はエンターテインメントとして純粋に楽しめばいいのだが、背景知識があれば「有事のリーダーシップ」についてより深く読み込むことが可能になるだろう。