空き家対策や地域創生事業として期待

 少子高齢化社会が進行する中、空き家問題の深刻度が増している。平成25年における空き家は全国で820万戸に上り、空き家率は実に13.5%となっている。空き家対策の必要性が増す中、2015(平成27)年に空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)が施行され、全国の各自治体において空き家バンクなどさまざまな取り組みが始まっているが、空き家活用の広がりはこれからだ。

 また、地域創生の掛け声のもと、全国でさまざまな地域活性化事業が展開されている。しかし、地域活性化事業のための予算が、結局は大都市のコンサルや広告代理店に流れてしまっていることも多いとの指摘もある。

 囲い込むのではなく、地域でもてなすこの分散型ホテルの取り組みは、これら空き家対策や実効性のある地域活性化の1つの手段・考え方とならないか。

分散型ホテルに拡大の兆し

 この分散型ホテルの取組は、徐々に拡大の兆しを見せている。昨年には、まちを1つの宿と見立て、まちぐるみで宿泊客をもてなすことで地域価値向上を目指す「日本まちやど協会」が発足。現在、谷中のほか、香川県高松市仏生山など6地域が登録されている。

 昔から地元にある商店で買い物し、地元の人が利用する地元の食材を使ったレストランでの食事をして、地元住民とのふれあうといった、あたかも地元住民として生活するかのように滞在できる体験は、これまでの「観光地」や一般的なホテルが提供することは難しい。こうした体験の魅力が大きく広まる可能性は、十分あるのではないか。

 分散型ホテルのビジネスモデルは、ホテルがなく観光客の滞在が難しい集落など、これまで観光とは無縁だった土地も「観光地」となりうる可能性を秘めている。

 囲い込むのではなく、地域でもてなす分散型ホテルの魅力が広がり、地域経済活性化や空き家対策に少しでもつながることを期待したい。

追伸:まちづくり事業(空き家対策、公園活用など)の地域経済効果の研究を行っています。これらの事業について、事例データを提供いただける方、アドバイスいただける方、ぜひinagaki_energy@yahoo.co.jpまでご連絡ください。

*本原稿は個人として執筆したもので、所属する団体の見解などを表すものではありません。