NHKの会長に安西祐一郎氏(前慶應義塾塾長)が就任する問題を巡ってNHK経営委員会が紛糾し、安西氏が「就任拒否」する一方、経営委は「辞退勧告」するという異例の展開になった。
就任要請した会長候補に「辞退勧告」
安西氏が記者会見で発表した文書によれば、経緯は次のようなものだ。
<12月19日に小丸NHK経営委員長から就任の要請がありましたが辞退し、さらに22日にも辞退しました。(中略)小丸委員長および経営委員会の全面的協力を前提とすることの了解を小丸委員長から得たうえで、まったくの善意で内諾の意向を伝えました。
経営委員の方々は、私のこれまでの経営・学術・教育改革等に関する活動や会長としての私に期待することなどを、十分に理解して要請したと認識していたのですが、実はそうではなく、要請しておいてから後になって、いわれなき中傷を含む風評だけで私を評価するようになったことも判明してきました。
さらに、小丸委員長がいったん就任要請をし、私が内諾したにもかかわらず、今度は一転して私に辞退の勧告をするということも起こりました。
(中略)一貫した対応姿勢をまったく持たない小丸委員長、および風評に依存して動く経営委員会では、仮に私がNHK会長に就任しても、NHKをさらに良いものにしていくことは困難であると判断します。>
これは一方の当事者の情報なので「いわれなき中傷」の真偽は定かではないが、常識的に考えて、正式の就任要請を受ける前から「副会長を連れて行く」とか「交際費を使わせろ」といった条件をつけることは考えにくい。それが事実であったとしても、会長としての経営手腕とは別だろう。
安西氏が問われなければならないとすれば、慶応の塾長として行なった積極経営が失敗して、2008年度決算で269億円もの赤字を出した経営責任だろう。しかし、それは彼に就任要請する前から分かっていたことであり、就任要請してからのドタバタ劇の理由にはならない。