2010年に北京五輪や上海万博などの大イベントが終了し、2011年の中国社会は平時の状態に回帰することになる。

 2012年の政権交代を控え、中国国内では政治改革の加速を求める動きがある。共産党がすぐ改革に着手するかどうかは予測できないが、このままでは社会不安や矛盾がますます表面化していくことは間違いない。

 中国社会の最大のリスクの1つは、国民が政府の言うことを信用しなくなったことである。

 これまで政府は、集団的な暴動事件が毎年8万件起きていると発表していた。だが、最近、国内の専門家が発表した調査結果によると、2008年には23万件の暴動事件が起きていたそうだ。

 また最近、浙江省の農村で陳情を繰り返す村長が交通事故で亡くなった。それに関する地方公安局の発表について、村民が信用できないとして、対立が激しくなっている。村長は暗殺されたのではないかと村民の多くは疑っているのだ。

 不公平な所得分配と格差の拡大も、中国社会の大きなリスクである。ある調査によると、たった0.4%の富裕層(約500万人)が、中国全体の70%の富を支配していると言われる。また、政府高官の子弟(約3000人)の個人資産は平均2億元(約26億円)に上るとも言われている(いずれも人民解放軍大校・研究員辛子陵)。

 中国経済はこれからも成長を続けるだろう。しかし、社会の安定をどのように保つかは、喫緊の課題になっている。

政府はマスコミの管理をますます強化

 そこで政府は社会の不安要因を抑え込むために、マスコミやインターネットの管理を厳格化している。

 日本のマスコミはほとんど報道していないが、2010年に中国政府は、香港のテレビ局「陽光衛視」の中国大陸での営業を停止した。その結果、同テレビ局は休業に追い込まれた。

 陽光衛視の番組は文化大革命など歴史問題に関するドキュメンタリーや、政治・経済改革に関するトーク番組などが多く、知識人に人気が高かった。ただし、特殊な衛星アンテナがなければ受信できないため、中国の一般家庭での受信は少なかった。外国人が泊まるホテルやインターネットでの視聴が一般的だった。

 共産党中央の宣伝部が、なぜこのテレビ局の営業停止処分を下したのか。その理由は明らかにはなっていない。

 政府によるマスコミ管理のもう1つの例は、温家宝首相のインタビューに関する報道である。