2010年12月20日、丹羽宇一郎・駐中国大使が、中国の中でもひときわ反日感情が強い「敏感都市」、南京を訪れた。
その際に大使が発した「日中は夫婦を超えた関係。離婚もできなければ別居もできないのだから、仲良くしていくしかない」というコメントに、中国社会の注目が集まった。
意外にもネット住民の反応はおとなしかった
日本では「夫婦」という言葉は、「おしどり夫婦」や「夫婦茶碗」など一般的に「仲の良いさま」を表すのに用いられる。また、中国においても、夫婦関係といえば一般的に「最良の関係」を表す言葉である。
だが、中国の国民の反応は複雑だった。「違和感を覚える」「日中関係について夫婦という言葉を使うのは適当ではない」と反発する人が少なからず存在した。また、「『兄弟』あるいは『隣同士』という関係ならまだ理解できるが・・・」と受け止める人もいた。ネットでは、「同床異夢だ」「中国と日本は離婚した夫婦関係だろう」などという書き込みも目についた。
ある討論番組の司会者は、番組の冒頭で「そもそも日中の夫婦関係とはどういう関係なのか」を取り上げ、「どちらが夫でどちらが妻なのか」を明らかにすべきだと主張した。
中国の社会には「三綱」と呼ばれる伝統的な原則がある。家臣は王に従い、子は父に従い、そして妻は夫に従うというものだ。だから、どちらが夫でどちらが妻であるかは大きな論点になる。
これについてネットの反応を見ると、議論するまでもなく「日本が妻」という前提で書き込まれていたようだ。
こうした中国の反応は、当初からある程度は予想できた。だが、筆者が今回感じたのは、今までの中国ならもっと激しい反発や議論があっただろうな、ということだ。
議論好きの中国人にとってはまさに格好のテーマだろうし、中国政府にとっても、丹羽大使の言葉は決してすんなりと受け入れられるものではないはずだ。