いよいよ年末。市ヶ谷の防衛省内外での話題の中心は、もちろんクリスマスでも年賀状でもなく、政権交代により1年遅れた「防衛計画の大綱」(防衛大綱)と「中期防衛力整備計画」(中期防)が閣議決定されたことに尽きるだろう。
それに先立ち、様々なマスコミが防衛・安全保障論議を繰り広げたが、その中で気になることがあった。それは「海と空の防衛を重視すべき」「旧装備の戦車や火砲を削減すべき」という論調が目についたことだ。
専門家が分析するのならまだしも、一報道機関までが防衛予算の配分に言及して、以上のように踏み込んだ見解を示したことは残念でならない。
国民がテレビや大新聞から受ける印象は非常に大きいからだ。報道の論調が世論ひいては政治に少なからず影響を及ぼしている可能性が高い。
マスコミが国民に植え付けている間違った認識
例えば、11月21日付の読売新聞(社説)では、陸上自衛隊が南西方面の防衛に対処するため増員を要求したことに対し、「増員分は純増ではなく、冷戦時代の名残である北海道の2個師団・2個旅団体制などの縮小で捻出すべきである。陸自の要求は筋が通らない」と指摘していた。
また、「陸自の定員や戦車・火砲を一層削減し、その分を海自と空自の装備や定員の増強に充てる必要がある」と論じた。他のメディアでも同様の見解が出ていたようであった。
これはあくまで、わが国の防衛予算が今以上に増えないことが前提となっている。限られた範囲内でやりくりするのが当然といった考え方である。
現実主義ではあるが、国内外にメッセージを発信する機関として「適切」とは言い難いのではないだろうか。
再三、言われているように、防衛予算はここ9年連続で削減されている。人も減り、モノも買えず、そのうち訓練もロクにできなくなるのではないかという状況である。