横田空軍基地でスピーチするハリス米海軍大将(2016年10月6日、出所:米海軍、U.S. Navy photo by Petty Officer 1st Class Jay M. Chu/Released)

 中国の習近平国家主席がトランプ大統領とフロリダで会談した時期に、中国外交当局がアメリカ太平洋軍司令官のハリー・ハリス海軍大将を更迭するようトランプ政権に要求していたことが明らかになった。

 もちろん、ホワイトハウスはこのような(常軌を逸した)要求ははねつけた。だが、アメリカ海軍関係者たちは「ついに中国が他国の海軍の人事にまで口出しし始めた」と驚きを隠せないでいる。

対中強硬派の頭目とみなされているハリス司令官

 なぜ中国側はトランプ政権に対して「ハリス司令官を更迭しろ」というとんでもない要求をしたのか。きっかけが対北朝鮮政策に関する米国からの中国への要請であったことは明らかだ。つまり、トランプ大統領は、アメリカを核ミサイル攻撃する能力を手に入れつつある北朝鮮に対して、中国が“本気で”圧力をかけて抑制するよう習主席に要請した。中国はそのことに対する見返りの1つをアメリカに求めたということだ。

 中国国防当局は、前々からハリス大将こそが中国に対するハードライナー(hard liner:強硬路線支持者)の頭目であると快く思っていなかった。そしてトランプ政権がスタートするや、中国にとって大将はますます“目の上のたんこぶ”のような存在となっている。

 金正恩を軍事的に威嚇するためにカール・ビンソン空母打撃群を差し向けたり、巡航ミサイル原潜を派遣したりしている張本人はハリス大将である。また、韓国にTHHAD(弾道ミサイル防衛システム)を配備するのを強力に推進したのもハリス大将であり、中国にとっては、国際社会に目を向けてほしくない南シナ海での軍事的拡張政策に対して「公海航行自由維持のための作戦」(FONOP)を振りかざして騒ぎ立てようとしている元凶もまたハリス大将である──と中国は考えている。