(英FT.com、2017年3月20日付)

トランプ陣営とロシアとの共謀「証拠なし」 下院情報委員長

米首都ワシントンのホワイトハウスで、米小売業界トップらと会談するドナルド・トランプ米大統領(2017年2月15日撮影)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News

 ドナルド・トランプ米大統領が就任して以来、事実上毎日が「こんなことでっち上げられない」という瞬間の連続だった。だが、20日の議会公聴会――および公聴会に関するトランプ氏のライブツイート――は、ねつ造を完全に葬り去った可能性がある。米連邦捜査局(FBI)と米国家安全保障局(NSA)のトップが、大統領は何の根拠もなく陰謀論をぶち上げたと事実上証言したのだ。

 ジェームズ・コミーFBI長官とマイク・ロジャーズNSA長官が証言している傍らで、トランプ氏は両氏が言わなかったことを発見しようと必死だった。「NSAとFBIは議会で、ロシアは選挙プロセスに影響を与えなかったと証言した」とトランプ氏はツイートした。このツイートが投稿されたのは、FBIがトランプ陣営とロシア政府との共謀について捜査していることをコミー氏が正式に認めた直後のことだ。

 どんな基準で測っても――そして、これは傾斜の大きい尺度だ――、この日はトランプ氏にとって、これまでで最悪の1日だった。

 米国史上前例のない組み合わせという政権の最高幹部2人が、大統領の選挙チームの刑事告訴につながりかねない審問をめぐって、現職大統領の言い分を真っ向から否定したのだ。たとえFRBの捜査が何の成果も生まなかったとしても、両長官の証言はトランプ氏の権威を致命的に損ねた。

 英国がトランプ氏にスパイ行為を働いたという同氏の主張を「ナンセンス」「不条理」として一蹴した英国政府の意見に同意するかどうか問われると、ロジャーズ氏はためらうことなく同意した。米国最大の諜報機関のトップが、自身が仕える大統領の発言に対する外国の痛烈な描写を支持したのだ。リチャード・ニクソンでさえ、これほど直接的に否定されることはなかった。

 これでトランプ氏はどんな立場に置かれるのだろうか。まず、少なくともさまざまな捜査が終了するまでは、ロシアの影がトランプ政権に付きまとうことが確実になる。それも疑いが払拭されるのは、当局が訴追しないことを決めた場合に限られる。捜査終了までには、数カ月、ことによれば数年かかる可能性がある。その間ずっと、まだ続くリーク、面目を失うような証言によって憶測が激しくなるだろう。しかも、トランプ氏が新たな陰謀論を付け加えないで、このありさまだ。