「先日、日中両国のリーダーが会談し、密に接触した。日中関係の改善と発展に向けて重要なコンセンサスを得た。日中双方が同じ方向を向いて歩むことを望みたい。両国のリーダーが得たコンセンサスの精神に基づいて、各分野における交流と協力を強化し、日中関係を継続的、健康的、安定的に発展させていく必要がある」

朝鮮半島の緊張で大きく報道されなかった日中関係の改善

北朝鮮が韓国に砲撃、韓国海兵隊員1人死亡 十数人負傷

北朝鮮から砲撃を受け大きな煙を上げる韓国の延坪〔AFPBB News

 11月23日午後、中国外交部スポークスマンは定例会見において、「中国側は尖閣諸島における漁船衝突事件を経て日本側に対し制裁措置を取ったが、それは今後とも続くのか? 中国側は閣僚レベル以上の交流をいつごろ復活させるつもりなのか?」という記者からの質問に対して、こう答えた。

 朝鮮半島で砲撃戦が起きたため、上記のやり取りが日中双方のメディアで大きく扱われることはなかった。この日北京は寒かった。前日ほど風は強くなかったが、零下の大陸性気候に、身は引き締まる。

 国際政治の中心と化したこの場所で、北東アジア情勢の動向を眺めながら、インスピレーションが舞い降りてきたかのようだった。

 朝鮮半島が緊張関係に突入していくのを横目に、日中関係は風向きを変えていく。長いトンネルをようやく潜り抜けた、という感じがするのは筆者だけであろうか。

 9月7日、尖閣諸島沖で中国漁船衝突事件が発生して以来、日中関係は揺れに揺れた。2カ月以上にわたるこの期間、筆者は日中首脳外交、ハイレベル対話、そして企業交流、大学生交流、文化交流など民間イベントが次々に頓挫していくのをこの眼で見てきた。

中国での仕事が90%も減ってしまった

 そのたびに、特に日本側関係者がため息をつき、どうにもならないといったかすれ声で筆者に助言を求めてきた。

 本連載でも再三にわたり愚痴ってきたが、この2カ月間、筆者自身の大学での講義、各地での拙書サイン会、テレビ出演、講演会など90%以上が脆くもキャンセルとなった。

 改めて、傍観者としてではなく、当事者として日中関係の大きな流れに投身することの難しさを肌身に感じさせられた。

 中国での露出度がそれなりに高いため、筆者のあらゆる場面における「不在」と「欠席」が国民の間で話題になった。