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朴大統領の弾劾審理、セウォル号事故の「答弁書」に不満

韓国の首都ソウルで、朴槿恵大統領の即時辞任を求めるキャンドルデモに参加する人々(2016年12月31日撮影)。(c)AFP/JUNG Yeon-Je 〔AFPBB News

(文:平井 久志)

 韓国の有力な次期大統領候補とみられた潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長は2月1日午後3時26分、韓国国会内で記者会見を行い、「尊敬する韓国のみなさん」で始まる記者会見文を読み上げた。その中で、潘氏は突然、「自分が主導して政治交代を成し遂げ、国家統合を実現するという、純粋な意思を取り下げることを決めた。理解してほしい」と述べた。大統領選挙不出馬を表明した瞬間だった。

「途中下車」した潘基文氏

 潘基文氏の側近たちもまったく予想していない発言だった。聯合ニュースは同3時半に「潘基文『純粋な意思を取り下げる』大統領選不出馬宣言」と速報した。

 潘基文氏は10年間にわたる国連事務総長の任期を終え、今年1月12日に帰国し、次期大統領を目指して事実上の大統領選出馬を表明したが、わずか3週間で「途中下車」することになった。韓国の保守勢力の「救世主」の役割を期待された潘基文氏が大統領選挙への挑戦を断念したことで、保守勢力は求心点を失った。

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 現時点では、「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)元代表が支持率で2位以下に差を付けて優位にある。しかし、韓国は「ダイナミック・コリア」である。まだまだ、先行きは不透明だ。

 一方、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への弾劾訴追を審理している憲法裁判所の朴漢徹(パク・ハンチョル)所長は1月25日の第9回弁論を前に「私の任期は6日後の31日までとなった。裁判長として今日が事実上参加する最後の弁論手続きとなった」と述べた上で「3月13日までにはこの事件の最終決定が宣告されなければならない」と述べた。

朴大統領『弾劾列車」』の終着駅は?(上)揺れる憲法裁判所、居直る大統領」(2016年12月21日)で指摘したように、憲法裁判所の9人の裁判官のうち、朴漢徹所長が今年1月31日に、李貞美(イ・ジョンミ)裁判官が3月13日に任期満了になる。

 憲法裁判所で弾劾訴追が成立するためには裁判官の3分の2ではなく6人が弾劾に賛成しなければならない。3月13日以降は裁判官が7人になり、7人中6人の賛成がなければ弾劾は成立しない。

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