ホテルなどより安価でアットホームな雰囲気があり、空きスペース(家や部屋など)を貸す人の副業として大きな収入源にもなることから、空き家が増加する日本で人気急上昇中の民泊サイトだ。

 安く自炊も可能なことから、京都でもじわじわ人気が拡大。世界遺産、交通の利便性から通常であれば宿泊費が飛び切り高い銀閣寺周辺で民泊したインドネシア人の高校教師、アフマドさん。昨秋、家族を連れて、初めて京都を訪問した。

 紅葉時期のハイシーズンであったにもかかわらず、宿泊料は1泊1人、2500円だったという。「ハラル(ムスリム人対応の料理)を自分で作れるし、家主の日本人とも親しくなれて、さらに旅費を大好きな世界遺産の神社仏閣や美術館回りに使えた」と満面に笑みを浮かべる。

 一方、京都市は、「観光立国・日本を牽引する質の高い宿泊観光」を目指しており、国は、東京五輪に向けた民泊新法の成立を今春目指しているが、「京都らしい良質な宿泊サービスとなるよう京都市独自のルール構築が必要」と今後、「民泊に関して独自の『京都方式』を策定する方針」(門川市長)だ。

民泊の拡大には強い抵抗も

 「京都らしい」、京町家の活用などの民泊は推進する方針だが、門川市長は「住居専用地域内のマンションやアパートの一室を提供するような形は認めない。京都には似つかわしくない」「(民宿の)新法ができても、決してぶれずに徹底していく」と断言。

 今回新しく示した「京都市宿泊施設拡充・誘致方針」でも、国に地域の実情に応じた運用が新法で可能になるよう強く求めていくとしている。

 今春予想される通常国会の審議次第では「観光ビザによる180日未満の滞在」が可能になると見られているが、民泊先進国の米国では、ホテルと区別するためニューヨークなどの大都市では「30日未満の滞在を禁止」、さらに、又貸しも禁止だ。

 問題は、貸した部屋が不法行為や不法滞在に使われたりするケースが増えていることだ。

 京都でも、旅館業法や消防法など法律違反した「無許可営業」の民泊が急増しており、今回の新指針にあたってもパブリックコメントで、「運営実態が不明な簡易宿泊施設が増え、周辺住民と軋轢が出ている」「違法な民泊の取締りを徹底してほしい」という意見が多く公表された。

 賃貸マンションや一般住宅を民泊に転換するケースが急増し、営業数は把握しているだけで「2015年度で約700軒で約10年前の約4倍にも。2016年は1000件を超えた」(京都市)と警戒している。

 周辺住民の暮らしの安全やプライバシーが損なわれるとし、京都市は、違法民泊への取り締まりを強化する方針だが、「もぐら叩きの状況」(京都市関係者)とも言われるほど深刻化している。

 清水寺などの観光地では、交通機関やお土産店などでの特典もあり、「着物を着ているのは外国人」と言われるほど日本文化の浸透が目立つ一方で、「京都はディズニーではない。テーマパーク化した」(欧米人観光客)と評価を下げる声も増えている。

 1200年の日本の遷都・京都は今、伝統と最先端の狭間に揺れながらも、「世界が憧れる観光都市」を目指し、「日本一・京都」の復活を狙う。それは「新しいもの好きの京都人」に脈々と息づいてきた京文化の宿命みたいなものかもしれない――。