それはシニカルに言えば“京都商人”の逞しい商魂の表れとも言えるが、より優れた国際性や順応性の改革の波は、「外資開国時代」の地ならしとして、古都に押し寄せている。

 カナダ系高級ホテル「フォーシーズンズホテル京都」が昨年末、待望のオープンを果たした。構想から長年懸けて、紆余曲折の末、やっと産声を上げた。

 資本開発したのは東南アジア屈指のマレーシア最大級の財閥「ベルジャヤ・コーポレーション」。

 英国のプレミアリーグのサッカークラブを以前保有したり、国際的に知られるアジアビジネス界の帝王で創業者のヴィンセント・タン氏は「京都は日本でも成長著しい有数の地域。わが社の日本での初ベンチャー事業で、国際的成長を目指す上で非常に重要なプロジェクトだ。東京五輪でベンチャービジネスのチャンスがさらに広がればいい」と今後、沖縄でもフォーシーズンズの開業を計画しているという。

外資系の所有最高級ホテルは初

 京都では、これまで2006年の「ハイアットリージェンシー」を先駆けに、2014年「リッツ・カールトン」、昨年はシェラトンなどを展開する米スターウッド系が、嵐山に日本初の最高級クラス「ラグジュアリーコレクション」を開業。

 しかし、いずれも資本は日系企業(ハイアットはオリックス不動産、リッツは積水ハウス、ラグジュアリーは森トラスト)。フォーシーズンズが初めて資本・運営とも外資が担う形で開業した。

 余談になるが、京都は世界的な企業を多く抱え、京セラ、オムロン、村田製作所などいずれも収益力が日本で突出しているのが特徴だが、もう1つの特徴は任天堂など「独自資本」で第三者からの投資を求めず、「経営的自由」から独自の発想で世界に向けて最新技術を生み出してきたことでも知られる。

 そういう意味では、ベルジャヤのフォーシーズンズが「自己資本型経営」(総事業費約450億円)で初めての“京都流外資”とも言えるかもしれない。

 「唯一無二の京都の場所を探していた」(タン氏)という通り、ホテルは観光名所の清水寺や祇園から徒歩数分の世界遺産を多く抱える東山区で、三十三間堂、国立京都博物館が立ち並ぶ市内最高の立地だ。

 しかも妙法院の元敷地で近年、民営化後の資産整理で専売公社の病院から民間の「東山武田病院」に経営譲渡された跡地。平家物語に記されている貴重な文化遺産、平清盛の長男、平重盛邸跡の『積翠(しゃくすい)園』がホテル敷地内の庭園として保存された。

 2万平方メートルの広大な土地に、市内で史上最高額の120万円(1泊)のスイートをはじめ180の客室を抱え、うち3割を分譲販売。シェネルなどとコラボする西陣織物老舗「細尾」の手がけた客室で、京都の伝統が超近代的な姿にルネサンスされ、古都・京都の魅力を最大限に生かす。

 四季折々美しい眺望を満喫できる池泉回遊式の同庭園を“フォーシーズンズ”、長期間滞在する超富裕層をターゲットに「高級ホテルを売る」という日本では新しいマーケティングコンセプトも取り入れた。

 だからこそ、「世界で有数の観光資源としてポテンシャルの高い不動産を巡り、長年、複雑化した権利関係と当事者の間で計画は難航。当初の設計者で施工業者の清水建設が途中で手を引き、最終的に大成建設に変更される」(京都不動産関係者)など、京都市とも「景観規制関連(第一種中高層住居専用地域等)の調整で竣工が遅れた」(同上)という。