今回は無国籍でコスモポリタンな音楽の魅力を紹介します。(写真はイメージ)

 リオ五輪閉会式での「君が代」が国内外で大きな話題を呼びましたよね。アカペラでの女性コーラスのみのアレンジではあるのですが、ブルガリアン・ヴォイスと呼ばれるその厳粛で神秘的で不思議な響きはとっても新鮮で、インパクトが大きいものでした。

 閉会式の音楽監修はシンガーソングライターの椎名林檎が担当していたのですが、冒頭の「君が代」のアレンジは作曲家、編曲家、トランペット奏者の三宅純によるもの。どうやら、2005年からパリに在住する三宅のライブを椎名が現地で観た後、たまたま空港で2人が出会い、椎名のほうが三宅に「コンサート素敵でした」と名刺を渡したそうです。三宅はその時、椎名のことは知らなかったといいます。

 さて、三宅純の名前は日本ではあまり知られていないかもしれませんが、世界的にはその個性的な音楽によってとても評価が高く有名な音楽家です。鬼才・異才とも評されるこの音楽家は、個人的には日本の音楽家の中でも最も尊敬し、大好きな1人です。

 最近、2007年に発表された彼のアルバム「Stolen from strangers」がリイシューされました。今回はそれを機に、彼の独特なコスモポリタン音楽の魅力と、音楽性が相通じる彼の盟友とも言えるアーティストの作品をご紹介します。

真にコスモポリタンな音楽

三宅純「Stolen from strangers

 三宅純は1970年代に高校卒業後、ジャズトランペット奏者としての腕を磨くために渡米して、東海岸で音楽活動をしていました。80年代に入って日本に戻ってくると、「ジャズは終わってしまった」と感じて、次第にジャズシーンでの活動からCM音楽の仕事に移っていきます。当時はCM文化がちょうど華やかになっていた頃で、彼はありとあらゆるクライアントのCM音楽を手掛け、「CM音楽王」とまで呼ばれるようになります。これまでに2500曲以上のCM曲を手掛け、彼の名前は知らなくても、実はほとんどの人が彼の音楽を耳にしたことがあるはずだといっていいでしょう。