財務省が11月10日に発表した政府債務(国債や借入金などを合わせた国の借金)は、9月末で908兆8617億円となり、過去最高を更新した。

 GDP比は173%と先進国で最悪だが、長期金利は1%前後と低く、国債は順調に消化されている。

 こういう状況を根拠にして「財政危機というのは財務省の世論操作だ」とか「実は日本の財政は大丈夫だ」いう類の話が根強くあるが、それは本当だろうか。

 ここでは多くの財政学者の意見をもとにして、財政危機の実態について一問一答で考えてみよう。

<1> 国債は国民の資産だから問題ない?

 「国債は国民の債務であると同時に資産だから、夫が妻から借金するようなもの。家計としてはプラスマイナスゼロだから問題ない」という素朴な議論があるが、妻からの借金なら返さなくてもいいのだろうか。

 例えば夫が飲んだくれで仕事をしないで、妻がパートで稼いだ貯金100万円を借りるとしよう。これで夫が酒を買って飲んでしまうと、家計の資産は100万円減る。それでも妻が稼いでいれば、また借りればよいが、夫が働かないでそれを飲んでしまうと、いずれは妻の貯金も底をつく。

 つまり問題は家計簿(国のバランスシート)の帳尻ではなく、何に使ったかなのだ。

 夫(政府)が借金して浪費を続けていると、家計の資産が減ってゆく。国債で建設したインフラを将来世代が使うなら負担に見合う資産が残るが、子ども手当のようなバラマキ福祉は今の世代が使ってしまうので、将来世代には税負担だけが残る。

<2> 純債務は少ないので大丈夫?

 財務省の基準とする「国と地方の長期債務」は今年度末で862兆円だが、これはグロスの数字である。「国の資産を引いた純債務で見ると300兆円ぐらいしかないので、まだ大丈夫」というのがみんなの党などの主張だが、債務を圧縮するためには国の資産を売却しなければならない。

 国有財産は簡単に処分できないので、金融資産だけを見ると、主なものは米国債(為替介入で購入)110兆円、出資金(特殊法人などの資本)100兆円、年金基金200兆円の3つだ。