最近、中国の新聞や雑誌で頻繁に使われる言葉がある。「大国之道」というのがそれだ。
そんな言葉が新聞紙面を飾るとは、5年前には想像すらできなかった。2005年頃はまだまだ国民には「中国は遅れている」という気持ちがあった。「我々は三等公民(貧しい民)だから」というのが、彼らの口癖だったのである。
その劣等感は今やすっかり消え去り、中国人は「第一世界市民(世界に勝る市民)」の意識を持つようになった。
世界第2位の経済大国になった今、その経済力を盾に発言権を強め、米国ですら外交政策を展開する際は中国の顔色を窺わざるを得なくなった。その現状に、中国国民も「今の中国を敵に回すことは、石に卵をぶつけるようなものだ」という自負を持つ。
傍若無人な態度に国際世論は非難轟々
だが、そんな中国の態度に対して、国際世論は厳しさを増す一方だ。
尖閣諸島の問題を巡って、世界各国から「弱い者いじめに出る中国」と非難の声が上がった。「中国は傲慢」「中国は貿易カードをちらつかせる強引なやり方で、政治での優位性を保とうとした」との批判も相次いだ。
ノーベル賞受賞者でもある米国の経済学者、ポール・クルーグマンは、10月18日、NYタイムズに寄せた記事(「レアアースの中国による独占は危険」)で、「中国政府は、取るに足らない怒りでも、それを原因にして経済戦争に持って行きたがる非常に好戦的な政府だ」と指摘している。
10月末にベトナム・ハノイで行われた東アジア首脳会議でも、中国は西側から「危険分子」のレッテルを貼られた。領土問題に関して、会議で強硬に自国の正当性を訴える中国に対し、「表面はなごやかだが、多くの国が中国の傍若無人な態度に対して不安を感じた」と伝えるメディアもあった。
10月29日に予定されていた日中首脳会談が先送りになった際、中国の胡正躍外務次官補が「非常に厳しい口調で日本の態度を非難」(仏AFP)した。そうした態度も、東南アジア諸国が、中国は聞く耳を持たない頑迷な国だとの思いを強くする一因となった。