北京のオリンピック公園付近の上空に浮かぶ月(筆者撮影)

 いささか旧聞になるが、今年の中秋の名月の数日後、機会があって北京に滞在した。到着翌日の早朝、オリンピック公園の上空に月が出ていた。白々と霞んでいるのは夜明け直後だからなのか、スモッグのせいなのか。

 折しも中国は秋の科学技術週間を迎えており、広大なオリンピック公園の一角にいくつかの大型テントが設置され、北京科学フェスティバルが開催されていた。

 訪れたのが平日の早い時間だったせいなのか、会場は閑散としていた。出展者は政府関係の機関や企業、学校関係など。このフェスティバルのことは何年か前に聞いていたが、実際に見るのは初めて。動員されたという雰囲気が否めないのは、官製のお祭りゆえなのか。

 翻って見るに、日本では、1992年から「青少年のための科学の祭典」と銘打たれた科学フェスティバルが開かれている。最初は東京、名古屋、大阪の三都市のみでの開催だったのだが、その後着実に輪が広がり、現在は全国で100あまり、延べ動員数およそ40万人にまで成長している。

 その内容は、地元の科学館や展示施設、学校、会議場など一つ屋根の下にたくさんのブースが並び、子供たちに科学の楽しさを伝えるというものだ。主催者や開催時期はそれぞればらばらである。

クリスマスレクチャーと「科学の権威」

 この祭典のそもそもの発端は、ロンドンで1825年から毎年開かれている「クリスマスレクチャー」にある。その名の通り、クリスマスから新年にかけて開催される子供向けの連続実験講座である。

 実施しているのはロンドンにあるロイヤル・インスティチューション(王立研究所と訳されることもあるが、文字どおりの王立ではなく、国王の名の下に公式に認可された民間の公益機関)。同機関は、クリスマスレクチャーを開始する以前から、大人向けの公開実験講座を有料で行っていた。