日本の活力、起業力の再生をテーマに、新しい視点で事業展開する起業家が講演する「がんばれ日本」セミナーが、10月5日に行われた(主催:株式会社イノベーションアーティスツ、デジタルハリウッド大学大学院)。

 以下、コモンズ投信会長、渋澤健氏の講演内容をダイジェストで紹介する。

日本資本主義の原点が起業の原点に

渋澤健氏/前田せいめい撮影渋澤 健(しぶさわ・けん)氏
1983年米・テキサス大化学工学部卒、87年UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)でMBA取得。米系投資銀行、大手ヘッジファンドを経て、2008年コモンズ投信を設立、会長就任。主な著書に「渋沢栄一100の訓言」「運用のプロが教える草食系投資」(共著)など。
(撮影:前田せいめい、以下同)

渋澤 私は明治・大正期の実業家である渋沢栄一の玄孫(孫の孫)として生を受けました。

 2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」は、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎の視点で龍馬を描いていますが、渋沢栄一は、実業界で弥太郎の最大のライバルだったと言われる人物です。

 生涯に500の会社を作り、600の教育福祉事業に携わった渋沢栄一の業績の1つに、約140年前に創業された「第一国立銀行」(民間経営)があります。

 この銀行は、恐らく日本で初めての公募増資も実施しましたが、当時の「ベンチャービジネス」だった銀行を社会に説明し、資金を集めるために栄一が考えたのは、「銀行とは大きな河のようなものだ」という例えでした。

 「銀行に集まってこないカネは溝に溜まっている水、ぽたぽたと垂れている『滴』と変わらない。せっかく人を利し、国を富ませる能力があっても、その効果はあらわれない」と訴えたのです。

 「滴」には物を動かす力はないが、散らばっている「滴」が銀行に集まることで、1つの大きな資本となり、国を動かす原動力になるというのが渋沢栄一の考えた資本主義の原点でした。

 明治、大正、昭和と、日本の経済が銀行をバックボーンとして発展したのは、こうした考え方に基づいたものです。