突然だが、「B61」と聞いてすぐにピンとくる方はいらっしゃるだろうか。
B61というのは米国が1960年代から開発・製造、配備している核爆弾の1つだ。バラク・オバマ政権は先日、2020年から新型「B61-12」の生産を開始すると発表した。
なぜここでB61を取り上げるか言えば、「核なき世界」を目指しているオバマ大統領の考え方と逆行する動きに思えるからだ。
今年5月、同大統領が広島に出向いた時、「核保有国は恐怖の論理から脱すべき」と述べ、核軍縮に前向きの姿勢を示した。2009年のプラハ宣言では、全世界に向けて核なき世界を訴えたし、今夏には核兵器の「先制不使用宣言」をするとの観測さえあった。
先制核不使用宣言は見送り
だが今月5月、ニューヨーク・タイムズ紙が政府関係者の話として、同大統領は先制不使用宣言をしなさそうだと伝えた。理由は「同盟国を不安にさせ」、なおかつ「中国とロシアを勢いづかせる」可能性があるからだという。同盟国の中には日本も入る。
そうした状況下で、オバマ政権はB61の製造を進めていくというのだ。「核なき世界」と表舞台では言いながら、裏では新型爆弾の開発に抜かりがないと思われても仕方がない。
新型B61-12の予算は400個で約110億ドル(約1兆1000億円)と言われる。コストがかかり過ぎるとの批判のほか、「世界で最も危険な爆弾と呼べる」(レン・エイクランド・シカゴ大学教授)との声もあるが、計画は進行中だ。
簡単にB61がどういうものかを説明したい。
B61はいわゆる戦術核兵器で、射程の長いミサイルに搭載する戦域核兵器と違い、射程の短いミサイルに搭載したり、爆撃機や戦闘機に載せて落下させて使う。
これまで9タイプが製造され、今回のB61-12が最新型となる。実は2012年に、将来もB61を製造・配備していくための延命計画が打ち出され、過去4年を費やして研究開発が進められてきた。オバマ政権時代に下された決定である。