ISと交戦、34人死亡=リビア

リビア中部シルト中心部で砲撃する統一政府勢力の戦車(2016年6月10日撮影)〔AFPBB News

 バラク・オバマ大統領は8月に入ってから、何事もなかったのように、アフリカの一国で新しい戦争を始めた。

 リビアである――。

 日米メディアは海外ニュースの1つとして「空爆した」と報道してはいるが、トップニュースとしての扱いではない。リオ五輪や大統領選にメディアは関心を奪われ、リビア空爆というニュースは注目されていない。

 オバマ大統領は国民に向けてリビアで新たな戦争を開始したとの演説も行っていない。8月4日、国防総省(ペンタゴン)に出向いて記者会見を行った時も、シリアとイラクでのIS(イスラム国)の掃討が主な内容で、リビアという言葉は1回しか出さなかった。

大ニュースのはずが小さな扱い

 「リビアの国民合意政権(GNA)の要請で、ISからシルト(リビア北部の都市)を取り戻すために空爆を行っています」

 まるで子供に買い物を頼まれた親のような軽さなのである。日本は軍事行動という点で、自らに手枷足枷をつけているので他国への軍事攻撃などあり得ないが、いくら戦争慣れしている米国でも、新しい戦争を始めた事実は大ニュースのはずだ。

 オバマ政権のリビア空爆というはどういう意味があるのだろうか。

 まずリビアの現状について、簡単に記しておきたい。アラブの春の波及により41年間続いたカダフィ大佐の独裁政権に終止符が打たれたのが2011年。カダフィ大佐は生まれ故郷シルトの下水排水菅の中に潜んでいたところを捉えられ、殺害された。

 カダフィ政権の崩壊後からリビアは無政府状態に陥った。暫定的な政府や評議会が誕生したが、いくつもの民兵組織が群雄割拠しており国家はいまだにまとまっていない。

 各国の大使館も次々に閉鎖された。日本大使館も閉鎖されたままだ。その中で唯一、リビアに残ったのが米国である。