10月31日、約半年(184日間)の会期を経て上海万博が閉幕した。

 史上最多の246の国と国際機関が参加。入場者数も7000万人を突破し、史上最高となった。狙い通り、大国の名にふさわしい記録を残した。

 10月20日、筆者は残すところ10日となった万博会場を訪れた。

日本館に入場するために7時間待ちの行列に並ぶ人々(筆者撮影、以下同)

 日本館は7時間待ちと相変わらずの人気だ。「今から並んでも入館は午後6時を過ぎます」とのアナウンスが流れていたが、多くの来場者が迷わずこの列に加わっていた。

 「高いお金を払うんだから、いいもの見ないと損」と編み物持参で座り込みをするおばさんたちもいた。「日本館の何を見たいのか」という問いには、「そりゃあ、先進的な科学技術さ!」と周囲の人たちが迷わず口を揃えた。

 筆者はこれまで、「どのパビリオンに行ったのか」というヒアリングをしてきたが、多くの中国人が答えたのが「日本館」と「SAIC-GM館(上海汽車とゼネラル・モーターズの共同館)」だった。

 「日本館ほどの先端技術を見せるパビリオンは他にはない」と断言する人もいた。トヨタ自動車のロボットはスター並みの人気、自然と一体化する日本館の建築の理念と、先進的な環境技術に感動する一般市民もいた。日本館はその創造性が評価され、銀賞(「4000平方メートル以上の敷地面積・創造性あるパビリオン」部門)の表彰を受けた。

日本館の前では記念写真をする人たちが後を絶たない

 一方で、「万博終了後、上海でもデモ行進が起きる」という噂もまことしやかに飛び交っている。これまで騒ぎがなかったのは「万博開催中」だっからで、それが終わった今、可能性は十分あるというのだ。

 尖閣問題を巡り、日中の外交はいまだくすぶったままだ。10月26日には重慶でも反日デモがあり、地元紙も日本政府の一挙手一投足に対して過敏に反応し続けている。

 とはいえ、1人当たりGDPがすでに1万ドルを超えた上海では、これまで以上に日本ブランドが身近な存在になってきている。富裕層は「エアコンは日立、テレビはパナソニック、携帯はシャープだ」と、日本ブランドをステイタスシンボルとして掲げ、また、多くの市民は「政治は政治、我々民間人にはまったく関係がない」とも語る。日本ブランドの不買運動などは非現実的だし、理屈に合わないことも知っている。