EU(欧州連合)からの離脱を決定した英国の国民投票から1カ月が経とうとしている。市場は落ち着きを取り戻しているが、経済的な影響がどの程度になるのかは未知数という状況が続く。
英国のEU離脱の背景には格差問題が存在しているとの指摘があり、こうした問題を解決しない限り、似たような事態が再び発生するとの見方も根強い。確かにグローバル化の進展は格差を拡大してきた面があるが、格差に対する認識は人それぞれであり対処が難しい。
米英で格差が拡大したのは好景気のせい
格差問題がやっかいなのは、景気拡大が続くと、それに伴って格差が拡大する傾向が強く、政策的に大きな矛盾が生じてしまうことである。多くの人は格差拡大を望まないが、一方では景気の拡大を政府に強く求めるからである。
先進各国の格差はここ20年でかなり拡大してきた。上位1%の所得が全体の所得の何%になっているのかという数字を見ると、1980年には米国が8.2%、英国が6.7%(1981年)、ドイツが10.4%、日本が7.2%であった。各国にそれほど大きな差はなかったといってよいだろう。