「通貨安競争」なのか「通貨戦争」なのか。自国通貨の為替レート抑制を通じた貿易競争力維持を追求する各国の動きを伝える英米メディアの論調では、基軸通貨を持つ米国とそうでない国の立ち位置の違いが浮き彫りになった。

 一方、円高についてウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、日本の輸出企業でなく内需型企業に与える打撃を指摘。WSJ日本版のブログでは海外進出する中小企業にスポットライトを当てた。

 2回目となったWSJ日本版編集長の小野由美子さんとの対談では、世界を揺るがしている通貨問題を巡り、米国の報道と英国の報道の違いを中心に、日本が取るべき方法などについて話し合った。

アメリカに厳しい英メディア

小野由美子WSJ日本版編集長、川嶋諭JBpress編集長/前田せいめい撮影今回は「世界通貨戦争」についてWSJの小野由美子編集長と話し合った
(撮影:前田せいめい、以下同)

川嶋 通貨安競争は「通貨戦争」の様相を呈していますね。

小野 WSJでは通貨戦争とまでは呼んでおらず、「カレンシーファイト」とか「バトル」と表現しています。確かに各国とも対立は深まっていますが、まだ全面的な通貨戦争という事態ではないという認識です。

川嶋 英国のフィナンシャル・タイムズ紙(FT)とエコノミスト誌は「戦争」という言葉をはっきりと使っています。例えばFTの「高まる対立、隠れた通貨戦争に発展」やエコノミストの「通貨戦争を阻止するには」などです。

 もっとも、現状はまだ戦争と呼べるものではなく、それを回避するにはどうすべきか、という論調ではありますけど。

小野 驚いたのは、FTの論調がアメリカに対して厳しいことです。「一体アメリカはどこまで行くんだ!」というようなことを書いていますね。これにはびっくりしました。

川嶋 「世界的な通貨バトルに米国が勝つ理由」という記事ですね。FTは確かに、通貨問題、金融政策に関してはアメリカを厳しい目で見ているかもしれません。

 この戦いは、準備通貨をいくらでも発行できるアメリカが勝つことは初めから分かっていると言い切っています。