大小さまざまなビルが立ち並び、多くのビジネスパーソンが行き交う街、虎ノ門。都心の中でも近年もっともダイナミックに変化を遂げるこのビジネス街の一角にあるのが、1年制の社会人大学院「K.I.T.虎ノ門大学院」だ。もしかすると名前を目にしたことのある人もいるかと思うが、「KIT」が意味するものはご存知だろうか?この3文字は、「金沢工業大学(Kanazawa Institute of Technology)」の頭文字を並べたもの。そう、東京・虎ノ門に金沢工業大学の大学院が居を構えているのだ。

「教育付加価値日本一」を掲げ、その教育力において高い評価を誇る金沢工業大学が虎ノ門に社会人大学院を開設した理由とは何なのか。「大学として新しい形の教育=社会人教育にチャレンジしたいと思った時、その大きなニーズが東京にあった。それに加えて、『ビジネスと知的財産』を主たる教育内容とした時、その教育ニーズがあるのも東京だったんです」と語るのは、K.I.T.虎ノ門大学院で教鞭をとる加藤浩一郎氏(イノベーションマネジメント研究科 専攻主任)だ。

K.I.T.虎ノ門大学院
イノベーションマネジメント研究科 専攻主任
加藤 浩一郎 氏

 

ビジネスと知的財産の融合
—東京の中心でK.I.T.だから学べるもの—

 金沢工業大学が、工業系の大学の強みである「テクノロジー」を軸にビジネスや知的財産を学ぶ場として創ったのが、社会人大学院のK.I.T.虎ノ門大学院だ。元々は工学研究科に属し、2つの専攻としてビジネスや知的財産について学ぶという形をとっていたが、昨年から大きく枠組みを変えている。「知的財産系の話とビジネス系の話は、互いに密接な関係にあります。より勉強した内容と学位を一致させるためにも、これまでの研究科・専攻を改めて『イノベーションマネジメント研究科』として再出発しました」と加藤氏は話す。新しい研究科では、修了するとMBA修士(経営管理)かMIPM修士(知的財産マネジメント)を取得することができる。

このMIPMという学位は、聞きなれないという方も多いだろう。それもそのはず、日本でこの学位が取れるのはここだけだという。「知的財産とMBAの融合という点で考えると、他のビジネススクールでは絶対に得られないキャリアが見えてきます」と話すのは、MBAカリキュラムを統括する三谷宏治氏だ。「例えば知的財産の分野で働いている人が経営について助言したいことがあっても、経営側からすると経営がわかっていない奴に言われても…、と相手にされない。でも知的財産のプロがMBAを取れば、発言権も増すだろうし、その逆も然り。ここにはキャリアジャンプの大きなチャンスがあるのです。」

K.I.T.虎ノ門大学院
イノベーションマネジメント研究科 主任教授
三谷 宏治 氏


また、教育母体である金沢工業大学が持つ強みもしっかりと虎ノ門での教育に活かしている。「金沢工大は『ポートフォリオ学習』が有名です。これは大学で受けた学びの履歴をきちんと記録していくというもので、本学の学生はこれを就職に活かしている。K.I.T.虎ノ門大学院の場合は社会人大学院なので、学んだ履歴をそれぞれの現行業務や先のキャリアアップ・キャリアチェンジに結びつけて考えてもらうということを学習システムとして導入しています。学びのシステムとして学習前後の差をきちんと意識してもらっています」と加藤氏は言う。ここには本学が掲げる「教育付加価値日本一」という要素も大きく関係するようだ。

三谷氏は続けて話す。「『付加価値』とは売上と仕入の差。大学でいえば、学びを受ける前(入学時)と後(卒業時)のギャップの大きさです。このギャップをつけますよということが金沢工大としての一番の売りなんですね。」
 

MBAをとりながら弁理士試験一部免除も取れる
—密接に結びつく「知的財産とビジネス」をつなぐ—

 先にも書いたが、K.I.T.虎ノ門大学院が持つユニークさの一つに、知的財産について学べるという軸を持つところにある。知的財産に関する話題についてここ数年事欠くことがないのは、誰も異論がないだろう。虎ノ門大学院は設立当初から知的財産について学びの軸としていたが、なぜこの点に着目したのか。「持つべき知識として、両方必要なんです」と加藤氏は断言する。

「経営者を目指す人が弁護士・弁理士クラスの知識を持つ必要はない。しかし、知的財産の中に潜むリスクや強みをきちんと理解していかないと経営を進めることはできません。その逆に、知的財産や法務側の専門家にも、経営に興味を持って欲しい」と加藤氏が話すのには、理由があった。

「統計では、申請された特許のうち未活用のものが半分くらいある。内部での活用方法を考えるのか、オープン化により技術の普及を図るのか…このような議論が経営課題や経営戦略を絡めながらされるようになってきている。この判断は最終的に経営者がやることなのだが、ここに弁理士や弁護士が経営課題の関係性を分かった上でアドバイスできるようになれば、力強いサポートとなる。また、中小企業では自社になかなか専門家を持てないので、専門職に頼るしかありません」そこで、K.I.T.虎ノ門では『知財のわかる経営者と、経営のわかる知財担当者の育成』を大きな目標のひとつとしているのだ。

この大きな目標に向かって、サポート体制も整えられている。「一般的なMBAだけでなく、ビジネスと知財の二軸をしっかり勉強してMBAを取れるというのはとても珍しい形です。ましてや弁理士試験一部免除まで対応するようなカリキュラム整備はどこもしていない。ここでは所定の科目を履修すれば、MBA取りながら弁理士試験一部免除も取れるような勉強の仕方もできます」と加藤氏は話す。


 

「使える力を養います」
—実務家が多くの時間を割いて教育に携わる—

 数あるビジネススクールは、実務家による学びを前面に出すところが多い。K.I.T.虎ノ門大学院ももちろんそうなのだが、他のビジネススクールとの違いはどこにあるのだろうか。「大学院で学んだものが会社に戻って本当に使えるのか、という問題は大きい。統計上は65%のお客さんが買うと学んだところで、現実は自分のお客さんが買わないって言ったらそれまでですよね。我々が目指しているのは、『使える力を養う』ということです。本当に実世界で使う力として、ですね。」と三谷氏は話す。

使える力、いうのは簡単だが、どうやって養おうというのだろう。ここには学ぶ側と学ばれる側の関係性が大きく関わってくる。三谷氏は続ける。「ここは社会人向けの研究大学院ですから、もちろん研究をします。しかし決して学術研究には限らず、むしろ多くの人には『自社プロジェクト研究』をしてもらいます。今一番身近なテーマで問題を設定し、調査・分析をして、会社ですぐ使えるアウトプットにする。やはり目の前の人が困っているテーマの方が本気になります。ここでは単なる『知識』でなく、しっかり実感がある世界で『問題発見力』や『解決力』を与えたいという点を一番真剣なテーマとしている。これらの力が付けば、どの会社にいようが、どの道を歩もうが、生きていけますよね。」

実際の社会から一人一人がそれぞれ問題を発見してくるのだから、その解決策も千差万別になる。サポートする教員はどのような体制になっているんだろう。この点について三谷氏はこう話す。「同じ『実務家教員による教育』といっても、教員たちがどのくらい教育に時間を投入しているかは違います。ここの専任の教員は実務の傍でしっかりゼミを持っています。となると、もちろん指導にあたる時間は授業一コマとは比べものになりません。幅広い分野を仕事にしている人たちが集まり、さらには多くの時間をコミットしているからこそ、『使える力を養う』ことができるのです。」

「われわれは、ブランドでは名門大学のビジネススクールには敵わない。しかし、ブランドではなく今の自分のキャリアに役立つ力が欲しいという人にはその力を提供しています。実際入学した院生と言えば、しっかり実力をつけたいという幅広い企業・業種の中堅社員だけでなく、中小企業の社長さんや事業承継者、美術デザイナー、弁護士、弁理士、中央官庁職員、大学教授などなど……その多様性は毎年すごいなぁと思います。」と加藤氏は笑う。

イノベーションが必要だとあちこちで叫ばれる昨今、ここから10年で社会のあり方や経済状況はさらに変化し続けていくだろう。では、今の自分にどんな力をつければ、ビジネスパーソンとして生き残ることができるのか。設立当初から変わらない「ビジネスと知的財産」というオリジナリティを持ちつつ、社会情勢に対応して柔軟に変化していくK.I.T.虎ノ門大学院で学ぶと、あなたはどう変化するだろうか。
 

<取材後記>

 虎ノ門という東京の中心地にあるということで、都内に勤める人にとっては時間を有効に使えそうだなというのが第一印象だったK.I.T.虎ノ門大学院。知的財産分野は国際的にも問題になることが近年増えている。自身の力としてつけるのはもちろんのこと、MBAやMIPMの学位取得が強力な武器となることは間違いないだろう。また。定員が40人と少人数だからこそ、他の学生や教員とのコミュニケーションを密にできるのは大きな強みではないだろうか。


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