WTI原油先物価格は6月8日に1バレル=51.23ドル(終値)に達して以降、下落に転じている。英国のEU離脱という警戒感も加わり、WTI原油価格は5日連続で下落し、15日以降の時間外取引では47ドル台で推移している。
直接のきっかけは6月10日に米石油サービス会社ベーカーヒューズが、「米国の石油掘削リグ稼働数が2015年8月以来の2週連続の増加となった(328基)」と発表したことにある。「原油価格が1バレル=50ドルになれば、リグ稼働数が増える」という市場の予想通りとなったため、原油価格は10週間ぶりの大幅安となった。
米国でリグ稼働数が増加したのは2015年7月以来のことである。当時の原油価格は1バレル=60ドル前後だった。その後、シェール企業が生産体制を効率化しているので「同50ドルでも増産態勢に入り、原油市場の供給過剰が進むであろう」という見立てである。
原油価格は、今年に入って付けた12年ぶりの安値(1バレル=26ドル台)から約90%も上昇しており、市場で高値警戒感が出ていたことも見逃せない。このような不安心理に加え、「増産に備えるシェール企業が50ドルになれば販売価格を確定するために先物の売りが大量に出る」との観測から、「売り」が「売り」を呼ぶ展開になったようだ。
しかし、市場関係者のこうした反応は“過剰”と言わざるを得ない。米エネルギー省は6月13日、「7月のシェールオイルの生産量は7カ月連続でマイナスとなる(日量12万バレル減)」との見方を示した。つまり、リグ稼働数が増加しても、実際の原油供給に反映されるのはかなり先のことになる。