鈴木章・北海道大学名誉教授、根岸英一・米パデュー大学特別教授という2人の日本人がノーベル化学賞を受賞した。
今年の自然科学分野のノーベル賞受賞者の中には「ロシア人」もいる。炭素素材「グラフェン」の分離に成功し、ノーベル物理学賞を受賞した英マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授とコンスタンチン・ノボセロフ教授である。
2人ともロシア出身であるが、現在、ガイム教授はオランダ市民権を獲得しており、ノボセロフ教授は英国とロシアの二重市民権を持っている。「2人は本当にロシアのノーベル賞受賞者と言えるのか」と、ロシアのメディアは疑問を投げかけている。
生まれた国で基本教育を受け、ノーベル賞に値するようなレベルの高い研究のために海外(欧米)に行く。これはロシアと日本の学者に共通するキャリアパスだ。読売新聞は今年の2人の日本人受賞者について、「海外での切磋琢磨が業績の原動力になったとされる」と報じている。
2人ともロシアではなく英国の学者?
2人は「ロシアの学者」と言えるのだろうか。それを判断するためには、2人がノーベル賞をもらうに当たってロシアが十分な貢献をしたのか、また、2人が自分たちのことをロシア人だと自覚しているのかを明らかにしなければならない。
その結果、ロシアのマスコミは、2人ともロシアの学者とは言い難いと判断した。
2人の経歴を見れば、確かにそう考えざるを得ない。ガイム教授は1958年に旧ソ連邦のソチ(2014年に冬季五輪が開催される町)で生まれた。子供の時に、ロシア連邦に属するカバルダ・バルカル共和国の首都、ナリチクに移住。ここで高校を卒業してからモスクワの物理工学大学に入学。ロシア科学アカデミー固体物理学研究所で博士号を取得した。
その後、90年まで超小型電子技術研究所で働いていた。もし、共産党政権が維持されていたら、今まで同じ場所に勤めていたかもしれない。だが、ゴルバチョフのペレストロイカとグラスノスチ(情報公開)政策によって出国の権利が認められたので、外国に出ていってしまった。
英国のノッティンガム大学、バース大学、デンマークのコペンハーゲン大学にポストドクターとして留学した後、オランダのナイメーヘンという小さな町でカトリック教大学の準教授になった。2001年、また英国に戻ってマンチェスター大学の教授となった。