上海では尖閣諸島問題がフェードアウトした今、市民の関心は再び住宅価格に向けられている。
9月29日、中国政府はまたまた住宅価格の抑制策を発表し、続いて10月7日、上海市が実施細則を明らかにした。この新政策のおかげで、上海の不動産市場はちょっとした「混乱状態」にある。
中国人が綴ったこんなブログを見つけた。「7日夜に上海の実施細則が発表された。昨日、頭金を払ったばかりで、明日は住宅積立金のローン手続に行く予定だった。これじゃ家が買えない」。彼が購入しようとしたのは3戸目の住宅だ。今回の抑制策はまさにここがターゲットになった。
市井では上海市の実施細則をめぐって噂が飛び交う。「上海では『住むための家』を1戸しか買えなくなった」「いや、区をまたげば買えるらしい」――。市民は不安な気持ちを抱いている。
ここで少し解説を入れたい。日本人は「3戸目の住宅購入」と聞いて、よほどの金持ちだと想像するだろう。だが、上海では大金持ちでなくとも、普通に3戸目の購入を検討する。
上海でよくあるパターンが、政府から払い下げられた古いアパート(「老公房」)を1戸目として所有しており、2戸目を住宅として使用するというもの。そして3戸目を「生活条件を少しでもよくするため」に購入する。言ってみれば投資だが、家賃収入でローンを返済し、その余りをちょっとした贅沢に回すというもので、当事者からすればそれほど大それた行為ではない。
このような、いわば生活防衛のために3戸目を購入する傾向がある一方で、「投機買い」というような、一度に複数の住宅を手に入れる、いわゆる「不動産転がし」も存在する。
上海の不動産価格は高止まりしたまま
上海の不動産価格は2001年以来、右肩上がりに上昇し、現在、バブル状態にあると言われる(参照記事:「ついに弾けるか、上海不動産バブルがカウントダウン?」)。政府が打ち出している価格抑制策が効果を発揮するのか、それとも一気にバブルが崩壊するのか。不動産価格の動向が気になるところだ。
上海では5月をピークに下落が続いているようだが、市民の肌感覚からすれば一部の高級物件を除いて不動産価格はほとんど下がっていない。