政府は3月、「金融経済分析会合」という異例の会議を3回も開いた。そのうち第1回に呼ばれたのがジョセフ・スティグリッツ、第3回はポール・クルーグマンというノーベル賞受賞者で、彼らはともに「消費税の増税は延期すべきだ」と提言したと伝えられている。
積極財政論者として知られる彼らを呼んだら、こういう提言が出ることは分かっていた。安倍首相はこれを根拠にして増税を延期し、それを争点にして衆議院の解散・総選挙に打って出るつもりだろう。しかし彼らは本当に政権の意に添うことを言ったのだろうか?
アベノミクスへの死刑宣告
首相官邸のホームページに和訳されているスティグリッツの資料を読むと奇異に感じるのは、「消費税」という言葉が一度も出てこないことだ。
書かれているのは欧米の不況の話ばかりで、日本の話は出てこない。彼が強調するのは「深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。唯一の効果的な手段は財政政策」ということだ。
そして具体的な政策として、彼は「緊縮財政をやめる」ことを提言しているが、そこで挙げている政策は、投資の促進や技術開発に政府支出を増やして生産性を上げるといった「構造改革」で、増税の延期ではない。
クルーグマンも前回の増税のとき首相官邸まで招かれて延期を勧告したが、日銀のマイナス金利については「効果は限定的だ」とコメントした。彼らの一致しているのは、ゼロ金利では金融政策の効果はないので、財政政策を発動すべきだということだ。