北朝鮮による日本人拉致事件は、北朝鮮の「再調査、打ち切り」宣言により、解決の展望がまた遠のいたかにみえる。
一方、米国では、北朝鮮による米国人青年の拉致疑惑が議会で提起された。本格的な調査に乗り出す決議案に、大統領選で共和党候補として活躍するマルコ・ルビオ上院議員が加わったことで、決議案採択が一段と前進する見通しが強くなってきた。
米国政府が自国民の拉致疑惑の調査に動き出せば、日本の活動と連帯する可能性も生まれ、日本人拉致の解決に新たな希望を与えることともなる。
8人の議員が関連機関に本格的な調査を要請
この米国人青年の拉致疑惑は、当コラム「自国民が拉致された!北朝鮮に米国の鉄槌は下るか」(2016年2月17日)でも報告したように、デービッド・スネドン氏という米人大学生(当時、24歳)が2004年8月に中国の雲南省で行方を絶ったことに始まった。
その後の各方面での調査で、同氏が当時、雲南省で暗躍していた北朝鮮工作員に拉致され、平壌に連行されて、北朝鮮の軍事要員らの英語教師をさせられている可能性を示す状況証拠がいくつも判明した。
こうした状況に対して、2月10日、米国議会上下両院の合計8人の議員が、同両院に個別に「デービッド・スネドン氏の失踪への懸念の表明」と題する決議案を提出した。同決議案は、スネドン氏が北朝鮮に拉致された可能性が高いとして、米国政府の国務省など関連機関に本格的な調査の開始を求めていた。