(写真はイメージ)

 中国におけるビジネス上のリスクについての4回目は、中国の労務問題を取り上げる。近年の民意向上などに伴う労働者の権利意識の高まり、労働需給の逼迫、労務コストの高騰、労働争議の頻発など、労務問題は中国で活動する日本企業の最大の経営上の問題の1つとなっている。

 今回は労働人口、労働法令、賃金、労働争議などを中心に俯瞰してみたい。

労働人口の減少と人件費の高騰

 少子高齢化の進展に伴い、中国の労働人口は減少する傾向となっている。国際基準(15~64歳)による労働力人口は2016年にピーク(10億935万人)を迎えるとされており、青壮年(20~39歳)人口については、2002年にピーク(4億5610万人)を過ぎている状況である。

 そのため、今後、労働人口の逼迫化という可能性が指摘されている。それに伴い、人件費のさらなる高騰の可能性もある。

 また労働人口の減少に伴い、失業率は低下傾向にある。都市部における失業率は2008年後半からの世界的な金融危機の影響を受け、2009年は4.3%まで上昇したが、その後の経済回復に伴い、2010年には4.1%に低下し、その後もこの水準で推移している。

(中国における失業率に関する統計は、国際的な失業率の算出方法とは異なり、都市部の一定の条件を満たした者、つまり「15歳~64歳の都市戸籍を有し、就職サービス機関に登録した者」に限られている。そのため、農民工の就業実態は、これに含まれていない)

 近年、少子高齢化の進展に伴い、農村部からの余剰労働力供給が不足し、2012年において、15歳~59歳の生産年齢人口が初めて減少に転じた。また、就学率・進学率の上昇、政府主導の中西部開発等による内陸部の産業発展とそれに伴う労働力需要の増加などにより、沿海都市部へ出稼ぎに出る農民工の割合は減少傾向となっている。そのため、東部沿岸部を中心に、昨今では「招工難」(労働者募集難)と言われる一般ワーカー労働者の不足が顕在化している。