春節(旧正月、今年は2月8日が元旦)は中国の「専売特許」ではなく、世界中の華僑が1年の最大イベントとして盛大に祝う。国民の4人に1人が中国系という世界でも屈指の華僑(約700万人)を多く抱えるマレーシアでは、8、9日が祝日だった。
新年を祝う飾り物の深紅と金色の超奇抜な巨大提灯や、商魂たくましい中国人らしく商売繁盛をもたらすと伝えられる竹や菊、金柑の木々が、家の軒先から町のいたるところにまで、華やかに彩を添える。
春節の期間、中華系の多くが約1週間の休みを取るなか、マレーシアでは今年も100万台以上の車が"民族大移動"。首都圏の交通網が元旦前後、大幅に麻痺し、例年通り、大変な交通渋滞となった。
そんな民族大移動だけでなく、家族や親戚、友人らが集まって豪華にレストランを貸しきって年越しや新年の会食風景も、春節には欠かせない伝統的行事だ。
進行するマレーシアの現代病
しかし、そんな中華系のために祝う伝統的な春節行事も、昨今は外国人労働者抜きには成り立たなくなってきた。背景には労働力不足があり、春節のこの時期、"マレーシアの現代病"が抱える病巣の深層が露となり、その病状の深刻さが浮きぼりになっている。
春節を祝うマレーシアのお花屋さんは、新年の縁起物である竹や菊、金柑などの木々を買いに来る中華系の客で賑わう。
特に首都のクアラルンプールに居住する中華系が続々と押し寄せる郊外にある何百軒もの店が連ねるスンガイ・ブローの花卸業者の軒先には、並べられた花々とともに、販売員の外国人スタッフが大きな声を張り上げ、客引きをする姿が目立つ。
31歳のマヤさんは(仮名)「日本のアジサイもありますよ」と筆者に語りかけてきた。マレーシアでは春節時限定で、欧州などから輸入された種や苗から育ったアジサイを高値で(1鉢80リンギ=約2300円)売っていて、日本人にも人気だ。
マヤさんは人懐っこい笑顔で人気のスタッフだが、もともとは出稼ぎメイドとして4年前にマレーシアにやって来たという。故郷のインドネシア・メダンには夫と7歳になる娘が暮らしているという。
マレーシアでは違法とされる人材斡旋業者の口利きでやって来たという。「斡旋料として5000リンギを要求されたうえ、中華系の家庭での過酷な家事に耐えられず、逃げ出した」とこれまでのいきさつを話してくれた。