ドイツで「第5の味」を見逃さなかった日本人

和食を創ってきたダシの“うま味”再入門

2016.01.29(Fri) 池田 亜希子
筆者プロフィール&コラム概要
いろいろな種類のトマトとダシ汁。うま味の体験で使われる(筆者撮影)

 2013年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」は世界で守っていくべき食文化として、ユネスコの無形文化遺産に登録された。

 和食の大きな特徴とされているのが、他国では見られない研ぎ澄まされたダシがあることだ。ダシの味を決めているのが「うま味」であり、「うま味」という日本語は国際的に使われている。

「うま味」とはいったい何なのか。世界が認める和食のダシを通して考えてみたい。

ほのかすぎる味、それがうま味

 人類が長い年月をかけ育んできた食文化は、その国の歴史や風土の影響を受け、じつに豊かで多様性に富んでいる。しかし、食の大きな部分を占めるようにも思える“味”は、これまでのところ「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」そして「うま味」の5つしか知られていない。いずれも舌の上にある受容体が、味の成分を捕らえることで感じられる。

 この基本五味がどのような味か、想像できるだろうか。甘味や塩味、苦味、酸味ははっきりとイメージできるのに、うま味がどうもよく分からないという人は案外多いのではないだろうか。

 それもそのはず。うま味はあまりに“ほのか”な味だからだ。成分が明らかになっても長らく味とは認められなかった。ようやく認められたのは、2000年頃に舌に受容体が見つかってからだった。

さまざまなうま味成分とそれを含む食品の例。グルタミン酸はタンパク質を構成するアミノ酸の1つ、イノシン酸とグアニル酸は核酸に分類され る。グルタミン酸は昆布や野菜などに、イノシン酸は魚や肉類に、グアニル酸はキノコ類に多く含まれる(出典:栗原堅三著、岩波ジュニア新書『うま味って何 だろう』)

さまざまなうま味成分とそれを含む食品の例。グルタミン酸はタンパク質を構成するアミノ酸の1つ、イノシン酸とグアニル酸は核酸に分類される。グルタミン酸は昆布や野菜などに、イノシン酸は魚や肉類に、グアニル酸はキノコ類に多く含まれる(出典:栗原堅三著、岩波ジュニア新書『うま味って何だろう』)
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トマトで試せる“うま味”とは

「私たちは“旨み”と“うま味”を使い分けています。旨みは、味や香り、食感など食べ物がもつ様々な特徴を総合して感じる美味しさのことです。一方、うま味はグルタミン酸やイノシン酸など特定の化学物質が示す味を指します」

 こう説明するのは、味の素の理事である二宮くみ子氏。NPO法人うまみインフォメーションセンターを通して、学校やイベントに出向き「うま味とはなにか」を多くの人に知ってもらう活動を行っている。

 うま味と旨みは違うというが、それならば、うま味は旨いのだろうか。

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東京工業大学大学院修了後、三菱化学(現田辺三菱製薬)の医薬品安全性部門に勤務。薬の安全性について調査、病院への啓発活動を行う。TBSラジオに転職し、「人権トゥデイ」「グッドモーニングジャパン」などの番組取材・レポートを行う。現在は、取材・執筆力と科学的な素養を生かし、サイテック・コミュニケーションズ社にてサイエンスライターとして活動している。


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