1.日中関係は着実に改善している
昨(2014)年11月、APEC(アジア太平洋経済協力)開催中の北京で第1回の安倍晋三総理・習近平主席の首脳会談が行われた時には、習近平主席のそっぽを向いた仏頂面の挨拶が有名になった。
しかし、今年4月のジャカルタでの第2回安倍・習会談では互いににこやかに30分間面談することができた。
それ以後、5月には自民党の二階俊博総務会長を団長とする3000人訪中団に対する習近平主席自身による大歓迎、7月には谷内正太郎国家安全保障局長の北京訪問時に李克強総理との面談が実現するなど、中国側の対日外交姿勢は明らかに融和方向に転じている。
そして、日中関係において今年最大の懸念材料だった、8月15日の終戦70年総理談話と9月3日の中国の抗日戦争勝利70周年記念軍事パレードも何とか平穏に終わり、日中関係は引き続き改善方向へと進んでいる。
2010年9月の漁船衝突事件以降、両国間の反感が一段と強まり、過去最悪の状況を招いた2012年9月の尖閣諸島領有権問題を巡る対立を挟んで、日中関係悪化が経済活動にも暗い影を落としていた。
それが今年になって、ようやく薄日が差す状況にまで回復してきたのは、両国にとって好ましい変化である。
中国側の対日外交姿勢が融和方向に変化した背景には、第1に、中国経済の減速が続く中、日本企業の対中投資拡大を期待していること、第2に、米中関係が悪化する状況下、日本まで敵に回して中国が孤立することを回避したいと考えていることなどが影響していると見られている。
こうした背景を考慮すれば、当面は日中関係の改善が続く可能性が高いと考えられる。