1965年以降、増加の一途をたどるアジア系移民
「多文化・多人種国家」「移民国家」と言われるアメリカ合衆国。今もそのことに変わりはない。ただそこに住む人種構成が大きく変化している。
1940年代には人口の9割だった白人は2014年には77%となり、中南米出身のヒスパニック人口は黒人(13%)を抜いて17%。
かっては多民族社会の中で「忘れ去られたマイノリティ(少数民族)」だったアジア系が注目され出したのは1965年以降。それまでの国別移民割り当てを撤廃した移民法改正(1965年)が施行されてからだ。
同法改正のおかげで中国や韓国、フィリピンからはいわゆる「呼び寄せ」制度を適用した移民が急増したのだ。
現在ではアジア系人口は1700万人。総人口の5.4%を占める。内訳は、中国系379万、フィリピン系341万、インド系318万、ベトナム系173万、韓国系170万、日系130万人。
アジア系は、50年後の2065年には14%にまでなると、有力世論調査機関、「ピュー・リサーチ・センター」は予測している。
アジア系に共通しているのは教育熱心で高学歴、勤勉さ、犯罪率の少なさ。その結果、米各界で活躍、アジア系は今や「マイノリティの模範」とまで言われるようになっている。
中国系アメリカ人学者が「アジア系アメリカ人」を徹底分析
本書は、祖父母が中国から移民した中国系アメリカ人3世の女流学者、ミネソタ大学のエリカ・リー教授が長年の調査研究を基に書き上げた「アジア系アメリカ人の軌跡」である。
リー氏の専門は移民学。名門タフツ大学を経てカリフォルニア大学バークレイ校で修士号、博士号を取得。アジア系移民学では押しも押されぬ存在になっている。
これまでにも『At America's Gates: Chinese Immigration during the Exclusion Era, 1882-1943』(2003)『Angel Island: Immigrat Gateway to America』(2010)を著し、学界で高い評価を得ている。