リムパック 2014 に参加した各国軍艦(写真:米海軍)

 安倍首相の「70年談話」が国内世論を考慮して中国側の予想より“トーンダウン”していたため、人民日報、環球時報などの英文ウェブ版を中心とした対米プロパガンダマシンも騒ぎ立てることができなかった。

 そこで、それらの中国英文メディアは「70年談話」の代わりに「抗日戦勝70周年パレード」の準備状況に関する話題を連日写真入りで報道しまくっていた。もちろんパレード開催後しばらくはパレード成功の模様を流し続けるものと思われる。

歴史を歪める中国の「抗日戦勝70周年」行事

「抗日戦勝70周年パレード」に関する宣伝報道に関しては、もちろん人民解放軍の動向を注視している米軍関係者たちの関心は高い。ただし、どの国の軍隊がパレードで行進するのか? どの国の政府首脳がパレードを観覧するのか? といった話題よりは、あたかも中国人民解放軍が日本軍を打ち破ったごときイメージを作り上げ、国際社会に定着させようとしている情報戦の進行状況に注目し、危惧しているのである。

 さすがに台湾では軍首脳などから、中華人民共和国が日本に勝利したようなプロパガンダに対して反発する声が上がっている。日本軍との正規の交戦主体は中華民国軍であって、抗日戦争時に中華人民共和国は存在していなかった。だが、国際社会における中国の強力な情報戦の前には、台湾からの正論は全く気にもかけられなといった状況だ。

 台湾軍部と同様に、太平洋戦争だけでなく大東亜戦争の経緯を学んだことのあるアメリカ軍関係者たちも、中国の「抗日戦勝70周年」には下記のように大きな疑義を呈している。

「8月15日から9月2日(米国時間)に日本が公式に降伏した時点では、アメリカ軍が主導した太平洋戦域では日本海軍は壊滅しており、太平洋の数多くの島嶼守備隊やフィリピンの日本軍も完全に敗北していた。ビルマからインドにかけての戦線でも日本軍は壊滅していた。そして満州にはソ連軍が侵攻したため関東軍は壊滅し満州国は崩壊してしまった」

「しかし、中国戦線では支那派遣日本軍は敗北してはおらず、中華民国軍との間で膠着状態が続いていた。ただし、本国との補給を絶たれ、満州からもソ連軍が南下してくる状況では、支那派遣日本軍の命脈も長くは持たなかったであろう」