今日は残念な話をしよう。日本の研究力の指標として、国際雑誌に発表される論文数の推移をみると、2002年頃から下降を始め、じり貧状態が続いている。
成長著しい中国は、2006年に日本を抜き、現在世界第2位である。一方の日本は、イギリス、ドイツにも差をつけられ、現在第5位に甘んじている。1995年に科学技術基本法を施行し、科学技術立国という方針を掲げて予算も増やしてきたにもかかわらず、なぜこのような残念な状態を招いたのか。どうすれば、このじり貧状態を脱却できるのかについて、考えてみたい。
日本の研究力はなぜ低迷したか?
日本の研究力が低迷しているという衝撃的なデータを最初にまとめたのは、文部科学省科学技術・学術政策研究所のスタッフだ。2013年3月に公表された「科学研究のベンチマーキング2012-論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-」と題するレポートは、日本全体の論文数が伸び悩みの状態である、という厳しい現実を明らかにした。
その後、鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康氏によってさらに詳細な分析が行われ、「運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究」と題するレポートが国立大学協会から本年5月に公表された。冒頭の図はこのレポートに掲載されたものだ。
右肩あがりに成長を続ける中国と、2002年頃からじり貧状態の日本が対照的だ。豊田レポートでは、論文数だけでなく、「インパクトファクター(文献引用影響率)」と呼ばれる論文の注目度(質)についても分析している。注目度(質)の指標は、1つの論文が他の論文で引用されている回数だ。日本のその評価結果は、「全世界の平均レベルであり、先進国に水を開けられ、いくつかの国に追い抜かれて31位となり、新興国との差が縮まっている」というものだ。なぜ日本の研究力はこれほど低迷してしまったのか。