9月7日、中国漁船が日本海上保安庁巡視船の停船命令に従わず逃走し、船体を巡視船2隻に衝突させた。海保は、意図的な妨害行為と判断、公務執行妨害容疑で船長を拘束した。同船長は今も日本の国内法手続きを通じて、拘束されている。

深夜零時、異例の中国大使呼び出し

中国漁船員14人帰国へ、船長は引き続き取り調べ

中国重慶で、尖閣諸島での中国漁船衝突事件で日本側の対応に抗議する市民たち〔AFPBB News

 尖閣諸島を中国の領土だと主張してやまない中国側は、外務大臣のみならず、12日午前零時、外交担当の国務委員(副総理級)が、就任間もない丹羽宇一郎駐中国大使を外交部に呼び出し、猛烈に抗議した。

 その際に使用した「情勢を見誤らないように」という言い回しは、ここ数年現場で中国をウォッチしてきた筆者からすれば、極めて政治的な意図を含んだシグナルに聞こえる。

 「一歩間違えれば、政治関係の安定という大局に悪影響を与えますよ」という警告だ。

 中国政府系シンクタンクに所属する国際政治専門家は指摘する。

 「事件後の日中関係は、小泉純一郎前首相が退任して以来最悪の事態に直面している。両国が適切に対処できなければ、当時のように、首脳外交が停止され、政治的摩擦に発展する可能性も否定できない。軍事的衝突はなかなか考えづらいが」

中国に戻ると、反日世論に火がついていた

 9月10日、東京から拠点とする北京に戻った私は、中国国内の世論がいわゆる「反日」に傾きかけていることを肌で感じた。

 突発的事件を皮切りに、マスコミが連日一面トップ、ヘッドラインでニュースを扱い、日本、中国両国家の相反する立場を対立軸に、国民のナショナリズムに火をつけている。

 中国のネット人口は4億を超えた。右翼系のポータルサイト・掲示板では次のような過激な言論が横行している。