スイスで旅行会社を経営する安東一郎さんの自宅から撮影したアイガー。インターラーケンからグリンデルワルトへ向かう鉄道の車窓から見える巨大なアイガーに、若き日の安東さんは大感動した(写真提供:グリンデルワルト日本語観光案内所、以下特記以外も)

日本人バックパッカーを魅了したスイスの村

 スイスと聞くと、雄大で白く輝く山々の風景が真っ先に思い浮かぶ。

 その代表と言えるアイガー、メンヒ、ユングフラウの3つの山は「ベルナーオーバーランド三山」と呼ばれ、世界中の観光客を魅了する。ここに約40年前、1人の若い日本人男性がバックパッカーとしてやってきた。安東一郎さんだ。

 はち切れそうな冒険心に駆り立てられ、高卒後、船や列車を使い世界のあらゆる国を単独で訪れた。3970メートルのアイガーのふもとの村グリンデルワルト(標高1034メートル)を知ったのは、スイスに来てからだった。

 当時すでにこの村は、夏はハイキング客、冬はスキー客で賑わっていたが、日本人観光客にはほとんど知られていなかった。手前にある湖沿いのインターラーケンに来る日本人が多少いた程度だった。