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 「フランチャイズモデル導入による年間100店舗出店」「予約からチェックアウトまでスマホ1台」。

 後発から急成長を遂げたバジェットホテルPodInnの後編では、そのユニークな出店戦略とマーケティングにも焦点を当てたいと思います。

 中国では、ホテル・レストラン・タクシー・病院といった伝統型産業ですら、日本で考えられないレベルでオンラインの影響を受け、独自の進化を遂げています。そして、この流れが他のアジア新興諸国に波及していくのは必至でしょう。

 日本のモデルだけを見ていると、世界から取り残されてしまうのではないか? そう考えさせられるケーススタディです。

現地に根差した「出店」「マーケティング」が、さらなる成功の秘訣

Legend Capitalの朴焌成パートナー(右)とDI上海高級創業経理の板谷俊輔(文中の画像・図表は全てドリームインキュベータ提供)

DI 板谷:前回はPodInnが、(1)明確に顧客ターゲットを意識し=「学生・旅行者」、(2)商品を徹底してクリスタライズ(具体化)=「低価格」かつ「清潔・ベッドの質・おシャレ」することによって、明確な差別性を打ち出し、後発ポジションから5年で会員数1400万人、326店舗という急成長を遂げてきたことをお聞きしました。

 一方で、商品・サービスの改善・改良を得意とする私たち日本人からすると、PodInnの大胆なまでの顧客視点の取り込みは、大いに参考にはなるものの、圧倒的に敵わない部分かというと、そうでもないと思います。

 極端な話、顧客目線の「商品コンセプト」設計は、いいプロデューサーがいて、気の利いたデザイナーがいて、しっかりしたGMがいれば、不可能ではない。ホテル1軒のレベルだと、素晴らしいホテルというのは、高級でもエコノミーでも、日本も含め世界中どこにもあると思いますので。

LC 朴:実際に、日本のビジネスホテルも、PodInnのベンチマーク対象に入っていましたし、私もよく日本に出張しますが、日本の宿泊施設は相当に洗練されていると思いますよ。

「ホテル業界におけるブルーオーシャンの発見」というPodInn・CEOの北京大学での講演ポスター

DI 板谷:そうなんです。そこで、社内外の業界有識者とも議論してみて思ったのが、やはりPodInnの特筆すべきところは、コンセプトを産み出した点だけではなく、むしろ、それをわずか5年で「圧倒的なスピードとスケール」をもって展開している部分にあるように思うのです。

 PodInnの成長は、業界の常識からすると考えられない、世界でも類を見ないくらいのレベルですから。

LC 朴:第1回でも触れましたが、日本企業は確かに「商品・サービス」、その裏側にある「モノづくりのオペレーション」は非常に高いレベルにあると思います。

 しかし、現地での「出店」や「マーケティング」がネックとなり、中国市場では十分に浸透していないケースが多い。中国企業から見ると、まさに「宝の持ち腐れ」なのです。

DI 板谷:では、今回は日本企業にとって、より現地展開の鬼門となりそうな「出店」と「マーケティング」を中心に深掘りをして参りたいと思います。