中国で全人代開幕、李首相が汚染対策重視を明言
北京の人民大会堂で行われた第12期全人代第3回会議の開会式終了後、大会堂の周辺に集まった人たち。格差への不満は日増しに高まっている(2015年3月5日撮影〔AFPBB News

 年に一度の「全国人民代表大会」(全人代:国会に相当)が北京で開かれた。全人代における政府活動報告の中で、李克強首相は経済成長率の目標を前年の7.5%から7%前後に引き下げた。これは正しい決断と言える。

 振り返ればこれまでの35年間、政府はひたすら高成長を追求した結果、環境負荷が高まり、環境汚染は年々深刻化してきた。アメリカの研究グループの推計によれば、中国の環境汚染は毎年10%程度のGDPに相当する負の効果をもたらしていると言われる。GDPは拡大しているが、環境汚染によってがんや呼吸疾患の患者が増え、医療費が急増し、経済成長の分を上回るコストが発生している。

 今年の政府活動報告では、経済成長のスピードを落として質の高い成長を目指すとしている。質の高い成長とは、環境にやさしく効率の高い経済成長を意味するもののようだ。

 しかし、経済成長率が低下したからといって質の高い成長が実現するものではない。環境対策をきちんと取らないと、環境は改善しない。

「改革・開放」で実質的な生活レベルは下落

 習近平国家主席はこれまでの政治指導者に比べると極めて不運な存在だと言える。経済成長が減速し、格差も拡大しており、共産党幹部の腐敗が蔓延している。これらの問題に対して国民の不満と怒りは一触即発の状況にある。