中国人は政府に対して多くの不満を持っているが、なかでももっとも不満を感じ、不快に思っているのは、共産党幹部の腐敗と所得格差の拡大に対してである。
習近平政権はこれまでの2年間、腐敗撲滅に取り組んできた。2014年には大臣級幹部が60人拘束されたと言われている。習近平政権の反腐敗闘争は政敵を倒すのが目的の1つという指摘もあるが、腐敗撲滅に取り組まないよりは取り組んだほうがいいのは明白である。反腐敗闘争は国民に幅広く支持されている。
一方、所得格差の縮小についての試みはようやく始動したばかりだ。まず、国有企業の経営幹部の年収は今まで青天井だったが、2014年に出された通達では、当該企業の全従業員の平均値の8倍以内でなければならないと定められた。
例えば、中国都市部住民の平均年収は約3万元(2014年、約56万円)だったが、国有企業「中国石油」の従業員の平均年収は14万元(同約260万円)だった。別の国有企業である「中国海洋石油」の従業員の平均年収は38万元(同約700万円)に達していたと言われている。共産党中央の通達に従えば、中国石油のCEOの年収は、約260万円の8倍だから最大で約2000万円以下に抑えなければならない。一方の中国海洋石油のCEOの年収は最大で5600万円ということになる。
目に見えない「陰性収入」
そして、2015年に入ってからもう1つの通達が出された。それは公務員および「事業単位」(日本の行政法人に相当する組織)の職員の給与を大幅に引き上げるというものだ。中国では労働組合が実質的に機能していないため、往々にして公務員給与の引き上げが賃上げのきっかけとなる。今回も同じ手順を踏んでいるようだ。