世界最大規模の南極トッテン氷河が、海水温の上昇で、溶解が進んでいるとするオーストラリア研究チームの調査結果が、1月末、発表となった。

驚くほどのスピードで縮小している氷河

氷河の青は魅力的だ

 こうした報道は、いまや目新しくもないかもしれない。科学者は絶え間なく研究を続けているし、誰しも少なからず環境問題を話題にしていることだろう。しかし、あまりにも社会は危機感に乏しく思える。

 そんな人々の関心を引くため、写真の力で訴えかけようとしたのが、写真家ジェームズ・バローグ。

 自身、もとは懐疑論者だったということが、より説得力を高めるその行動の記録『Chasing Ice』(2012)(ナショナルジオグラフィックチャンネル放映時題名「氷河消失の記録」)には、驚くほどのスピードで縮小していく氷河の姿が映し出される。

 訪れるだけでも大変なアラスカ、カナダ、グリーンランド、アイスランドなどの氷河近くに、低速度撮影カメラを設置した熱意には頭が下がる。そして、その努力の結晶たる、数十分おきに3年間ほど撮影した写真は、氷河消失の現実を我々にたたきつけるのである。

 雪が降り、積もり、おし固められ、年月を経て、氷河は形成される。一見、不動にも思えるが、溶けた水が表面に湖や川を作り出し、穴深く流れ込み、氷の下を流れ、氷河は動く。運ばれてきた岩の破片を「やすり」にし、大地を削りながら、なかには数千年もの年月を経て、最後、崩落(カービング(Calving))する。

 アラスカ、ブリティッシュコロンビア、パタゴニアなどには、カービングの様子が見られる観光名所もあるから、その迫力あるシーンを実際目にしたことがある方も少なくないだろう。