消滅自治体というセンセーショナルな報道以降、「地方創生」のスローガンの下、地方の活性化に関する取り組みに政府は力を入れるようになってきました。これは現在、新潟県十日町市の中山間地という「地方」に住んでいる筆者としては歓迎すべきことだと思っています。

地方活性化における部分最適と全体最適の議論

手刈りの稲刈りの様子(写真提供:筆者)

 ただ、一口に地方とは言っても、大きく分けると2つのエリアに分類されます。

 1つは中心市街地でもう1つは周辺地域です。中心市街地には周辺地域に比べると多くの人が住んでいます。そのため、いろんなことを行うにしても効率は良くなります。

 周辺地域(私が住んでいる中山間地の集落もそちらに入ります)は住んでいる人が少ないため、逆に効率は悪くなり、民間のお店などは採算が合わなくなって閉店したり、私の息子が通っていた公立の保育園も2014年3月に廃園になってしまうなど民間・行政問わずサービスは行われにくくなっています。

 これは全国共通の課題で、地方の周辺地域には人が住むために必要な施設やサービスが年を追うごとになくなっているのが現状です。このままの流れで行くと、将来的には地方の周辺地域には全く人が住まなくなってしまう可能性があります。

 他方では経済的な効率だけを見ると周辺部に人が無理して住む必要はないという考え方もあります。実際、私が講演をさせていただいた際に下記のような質問を受けました。

 「小さな集落で地域活性化の取り組みを行うことは部分最適という点では素晴らしいとは思いますが、全体最適という観点で考えるといわゆるコンパクトシティーのような考え方で中心市街地に集まって暮らした方がよいのではないでしょうか?」

 これは、半分は正しくて半分は正しくないという風に私は考えています。半分正しいというのは、効率を重視して全体最適を考えるべきだという点については全く異論はないからです。

 ただ、真の意味で全体最適を考えた時に、周辺部の中山間地といわれるところに全く人が住まない方がよいのか、という点についてはそうではないと考えるので、半分は正しくないと答えました。

 ではなぜ地方の周辺部の中山間地に人が住んでいた方がよいのかを説明します。

都市住民には分かりにくい「農地の多面的な機能」

 コンパクトシティーが最近脚光を浴びてきている中で、目立たないのですが、農地の多面的機能を評価し、農地の維持を図るための「多面的機能支払(農地維持支払・資源向上支払)」という取り組みが平成26年度から新設されました。

 この2つの取り組みは一見矛盾する内容であると思います。コンパクトシティーの考え方は今後人口が減っていく中で、中心部にできる限り様々なものを集約し、効率化させようという考え方です。

 一方で「多面的機能支払」の考え方は農地の持つ多面的な機能を評価し、広い農地を周辺部も含めて維持するための取り組みに予算をつけるというものです。