現在のサハラ・サヘル地域1におけるテロリストグループは、1990年代のアルジェリア内戦で活動していたグループに発している。

 当時、GIA(武装イスラム集団、1992年に設立)と呼ばれるイスラム過激派テロリストグループが有名になり、その後1998年にはGSPC(Groupe Salafiste pour la Prédication et le Combat)と呼ばれるGIAの分派が設立された。

90年代から始まった北・西アフリカのテロリストの台頭

 GSPCは2006年にアルカイダに忠誠を示すようになり、翌年からAQIM(al-Qaeda in the Islamic Maghreb、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ)と名乗るようになった。

 アルジェリアでも活発なテロ活動を展開したが、強力な治安機関の弾圧を受け、サハラ・サヘル地域(特にアルジェリア、モーリタニア、マリ、ニジェールそしてチャドの一部を含む国境付近)へ追いやられる形となった。

 AQIMは、この地域に中央政府の力が及んでいないことを利用し、麻薬売買などの犯罪にも深く関わりながら、影響力を強めていった。その戦略の一つとして、AQIMの幹部たちはその地域出身の女性と結婚し、地域との関係を築き、コミュニティに徐々に溶け込んでいったことがあげられる。

 例えばモフタール・ベルモフタール(MBM)2はマリ北部のアラブ系Barabicha族のリーダーの娘の1人と結婚し、地域をコントロールしている遊牧民族との関係を深めていった。

 その後、MUJAO(英語ではMOJWA:西アフリカ統一聖戦運動、2011年に作られたAQIMの分派)やアンサール・ディーン(Ansar Dine:サラフィスト・イスラム過激派グループ3)などのグループが作られ、もともとあったトゥアレグ(遊牧民)独立運動グループの活動と一体となりながら2012年のマリ紛争へと繋がっていく。

1 サハラ砂漠南縁部に位置する半乾燥地帯。大西洋から紅海に及ぶ国々を含む。カーボベルデ、セネガル北部、モーリタニア南部、マリ、アルジェリア最南部、ブルキナファソ北部、ニジェール、ナイジェリア最北部、チャド中部、スーダン中部を含む。エリトリア、ソマリア、エチオピア、ジブチを加えることもある。

2 MBMはGSPC、そしてAQIMで活躍していたが、2012年12月に「イスラム聖戦士血盟団」(Les Signataires par le sang)として独立、2013年1月のアルジェリア(イナメナス)人質事件において犯行声明を出した。その後2013年8月にはMUJAOと合併し、「Al-Mourabitoune」を設立した。

3 リーダーのイヤド・アグ・ガリ(Iyad Ag Ghali)は1990–1995年のトゥアレグ独立運動における主要メンバー。