ロシアが既に12億ユーロの代金を支払いフランスから購入する「ミストラル(MISTRAL)」型強襲揚陸艦を紹介する。12月7日の各種マスコミ報道にも見られるとおり、ウクライナ情勢に伴いその去就が注目されてはいるが計画は予定通り着実に進展している。

フランス、強襲揚陸艦のロシアへの引き渡しを延期

フランス西部サンナゼールの港に停泊するミストラル型強襲揚陸艦(2014年5月9日撮影)〔AFPBB News

 「ミストラル」とはフランス語で「季節風」(南フランスに吹く乾燥した冷たい北風)を意味する。ロシアは2隻の同型艦を発注しそのうちの1隻「ウラジオストック」は本年9月の時点で約200人のロシア海軍兵士を乗せフランスはサンナゼール近海にて海上試験を実施中である。

 ウクライナ情勢が現状を維持するならば必要な試験を終わり次第、または遅くとも来年春までにはロシアに回航されるだろう。2番艦「セヴァストポリ」も2015年中に完成の予定であり、その回航要員も既にフランス入りしている。

 2隻はいずれもサンクトペテルブルグに回航後必要な艤装および乗員の慣熟訓練などを行うが、それぞれ1年後にはウラジオストックに回航されてロシア太平洋艦隊に配属されることが決まっている。

 つまり2015年末から2016年春頃にかけて1番艦「ウラジオストック」は日本近海を航行してウラジオストックに入港するだろう。

1 主要性能要目

ポッド型推進器(Passenger Ship Queen Marry II)独立行政法人 海上技術安全研究所

 フランス海軍強襲揚陸艦「ミストラル」の主要性能要目は以下のとおりである。

(1)満載排水量約2万1500トン、全通甲板形
(2)フランス海軍初の統合電気推進艦(ディ―ぜル・エレクトリック推進方式)合計20.8MW(約1万9000馬力)、ポッド型推進器×2基

(3)商船規格(自動化が進み・居住性も改善)を採用したことから、前型のフードル型揚陸艦(仏海軍、満載排水量1万2000トン)の約2倍以上の大型艦でありながら大幅に船価を低減および約50%の工期を短縮。

(4)強襲揚陸作戦における中核的な指揮能力を有する。また、単艦でも強襲揚陸作戦を実施できる。

(5)医療設備など複合的な機能を有する。
(6)装備は小型艇対策の30mm機銃×2および12.7mm機銃×4、対空装備としてミストラル近接防空ミサイル(射程約6キロ)用連装発射機×2基のみ。

 商船規格で建造されていることからダメージコントロールにやや不安があるのではないか、および最小限の武器しか装備されていないことを除けば、多様な航空機および上陸用舟艇並びに戦車、車両を多数搭載できる同艦は、ロシアにとっても平時、有事を問わず多目的に活躍できる垂涎の一艦であることは間違いない。